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最終更新日:2022年2月23日

歩行困難、排泄障害に繋がることも…70歳以上の約10人に1人が悩む「脊柱管狭窄症」とは?

こちらの記事の監修医師
白石脊椎クリニック
白石建

(写真=PIXTA)

最近、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」という病名をテレビなどで聞くことがあるかと思います。数年前の日本整形外科学会の調査によると、脊柱管狭窄症に悩む人は、腰だけに絞っても360万人以上と推定され、特に70歳以上では10人に1人の割合の人が罹患している計算になります。高齢化が進む日本では、今後もこの病気に悩む人の数は増加の一途を辿ることになります。今回はその脊柱管狭窄症の原因と症状、治療法について見ていきましょう。

なぜ「脊柱管狭窄症」になってしまうのか?

背骨は主に首と背中と腰の3つの部分に分かれます。首の部分を頚椎(けいつい)と呼び、背中の部分を胸椎(きょうつい)、腰の部分を腰椎(ようつい)と呼びます。脊柱管狭窄症は腰椎と頚椎に多い病気です。

背骨は、「椎骨(ついこつ)」という後ろに穴のあいた骨が一つ一つ上下に重なるように繋がって形成されています。この椎骨の後ろの穴も上下につながって縦に長いトンネルができています。このトンネルを「脊柱管」と呼び、このなかを神経の本幹が通っています(図表1,2)。

 

脊柱管狭窄症とはこのトンネル、「脊柱管」が狭くなった状態です。その原因は、生まれつき脊柱管が狭い先天的なものと、年とともに狭くなる経年的なものがあります。多くの例ではこの二つの原因が重なって発症します。

経年によって脊柱管が細くなる理由としては、椎骨の角にトゲが出たり、椎骨を上下につなぐ靭帯が厚みを増したり、椎骨と椎骨の間でクッションの役目をする椎間板がつぶれて周りにはみ出たりすることが挙げられます。これらが脊柱管を塞いでしまうのです(図表3,4)。また、すべり症と言って、上下の椎骨が前後あるいは左右にずれてしまい、その結果脊柱管が狭くなる病気もあります(図表5)。

「腰」の脊柱管狭窄症について

ここからは、各部位ごとの脊柱管狭窄症の症状や特徴について解説します。

「腰部脊柱管狭窄症」には2つのタイプがあり、1つは「馬尾(ばび)型」、もう1つは「神経根(しんけいこん)型」といいます。

腰の脊柱管を通る神経の本幹は、束のようになった細い神経が馬の尻尾のように見えるため「馬尾」と呼ばれており、この馬尾から分かれた神経の枝の部分は「神経根」と呼ばれています(図表6,7)。

 

この神経の束である馬尾が、狭くなった脊柱管の中でひとまとめに締め付けられるのが「馬尾型」、神経根が挟まれるのが「神経根型」です。また、馬尾型の中には神経根型も合併している混合型脊柱管狭窄症も多く含まれます。

■「馬尾型」の特徴・症状:お尻~脚にかけて痛み・痺れ/休み休みでないと歩けない など

馬尾が締め付けられると、お尻から太ももの裏側、ふくらはぎ、足にかけて痛みや痺れが出ます。足に力が入らなくなって躓きやすくなるケースもあります。これらの症状は、左右で重い側と軽い側があるとしても両方の足に症状がでます。

また、腰部脊柱管狭窄症には「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という特徴的な症状があります。一度に長い距離を歩くことができなくなり、途中で何度も腰掛けたりしゃがんだりして休み休み歩く症状です。また、立ち上がってもすぐに腰をまっすぐ伸はすことができず、歩いているうちに徐々に前かがみになってしまいます。

その他にも、馬尾型の症状が進行すると、排泄のコントロールが難しくなることがあります。すると、何度もトイレに駆け込むことになったり、我慢が利かなくなったために漏らしてしまったりする可能性もあります。

「神経根型」の特徴・症状:お尻~脚にかけて強い痛み/下肢の脱力 など

次に神経根型の脊柱管狭窄症ですが、本幹から枝分かれした神経根が、骨と骨に挟まれて症状をもたらします(図表9)。

症状は主にお尻から太もも、ふくらはぎ、脛(すね)にかけての強い痛みと下肢の脱力です。

馬尾型との違いとしては、左の神経根が圧迫されれば左だけに、右の神経根が圧迫されれば右だけに症状が出ます。また、神経根型では排泄機能の障害は起きません。

腰部脊柱管狭窄症の治療法

腰部脊柱管狭窄症の治療法としては、痛みやしびれなどの症状の程度に応じて、運動療法や薬物療法、あるいは温熱、電気、マッサージなどの理学療法をもちいた保存治療をおこないます。

強い痛みやしびれには、神経ブロックが効果を発揮することがあります。神経ブロックには主に硬膜外ブロックと神経根ブロックがあり、神経根ブロックは特に神経根型の狭窄症に効果的です。

しかし、神経の圧迫が強く、保存治療を受けても日常生活動作や排泄機能の障害が悪化してゆくような重症例では、手術によって神経の圧迫を解除しなければなりません。

脊椎の手術には専門的知識と技術、そして経験が必要とされます。手術法はいろいろあり、それぞれに一長一短があるので、個々の患者さんに合った最善の方法を慎重に選択しなければなりません。

「首」の脊柱管狭窄症について

頚椎の脊柱管には神経の本幹である「脊髄」が通っています(図表2参照)。頚部脊柱管狭窄症は、狭くなった脊柱管の中で脊髄が圧迫されて起こります(図表3参照)。

特徴・症状:手足の痺れ、脱力/(重症化すると)歩行困難、排泄障害 など

頚部脊柱管狭窄症の主な症状は、手や足の痺れや脱力が挙げられます。手袋や靴下をつける範囲に痺れの症状が起こります。症状は左右で重い側と軽い側があっても、両方に出てきます。

痺れが強くなると、指先がこわばって繊細な指の動作が困難になります。たとえば、お箸の使用、ボタンのはめ外し、字を書くなどの手作業が上手くできなくなります。握力も低下するため、ペットボトルの蓋が開けにくくなり、手に持った物を頻繁に落とすようになります。

足の力も弱くなれば、歩行が不安定で転びやすくなり、階段を降りるのが不安で手すりを使うようになります。さらに症状が重くなると排尿・排便にも障害が起きる可能性があります。

また、首の脊柱管狭窄症には特別な注意が必要です。すでに狭い脊柱管の中で圧迫されている脊髄は、転倒など、それほど強くない衝撃でも容易に損傷されるからです。この損傷の程度によっては、一人で日常生活動作や排尿排便をおこなうことが困難になり、人の手を借りなければならなくなります。しかし、脊髄損傷を起こすまで自分が脊柱管狭窄症であることを知らずにいた、という例は少なくありません。

リスクが伴うこともある? 頚部脊柱管狭窄症の治療法

病気の初期は腰の狭窄症と同様に保存治療が行われます。一方、保存治療の効果がない重症例や、症状が徐々に悪化する例では手術を考慮します。強く圧迫され傷ついた脊髄は放っておくと元に戻らなくなるからです。

頚部脊柱管狭窄症は、上下に長い範囲が狭窄していることが多く、日本ではほとんどの場合に首の脊柱管を後ろから広げる「脊柱管拡大術(椎弓形成術とも呼ばれる)」という手術がおこなわれます(図表10)。

しかし、この方法には首の筋肉が広く損傷される、といった問題があります。首の筋肉が損傷されると、術後の頑固な肩こりや首の痛み、前曲がりの首の変形(後弯変形)(図表11,12)、首が固くなって後ろを向けなくなる、骨の間に入れた金属や人工骨が外れる(図表13)、などの問題が発生します。そのため、最近では金属や人工骨を使わず、首の筋肉を傷つけない手術も行われています。

まとめ

脊柱管狭窄症の根本的治療は、神経の圧迫を物理的に解放する必要があるため、症状が進行してしまうと、治療の選択肢は手術がベースになってしまいます。

私のクリニックでは、「脊椎の手術は、いつ頃、どの程度の症状になったら受けるべきなのでしょうか」という手術のタイミングに関する質問がとても多いです。脊椎の病気は、癌などとは異なり、それ自体が直接命に関わることが稀で、すぐ手術すべきだ! という判断に至ることがないためです。

脊椎外科医が手術に踏み切るタイミングを判断するポイントは、「予後の予測」です。予後の予測とは、この先何もせずに病気を放っておいた場合、症状がどうなるのか予測すること、です。

しかし、複数の脊椎外科医にかかった患者さんのなかには、それぞれの医師から正反対の意見や方針を伝えられ、何が本当なのかわからなくなり、途方に暮れて私のクリニックを受診しにきた…という方が少なくありません。つまり、予後の予測や、それをもとに手術のタイミングを決める、といった重要なことが、医師の経験や能力に大きく左右されてしまっているのです。

ここでいう経験とは、単なる物理的な年月の長さということではありません。手術した医師自らが、自分の患者さん一人一人を長い期間、丁寧かつ詳細に診続けてきたという自信と熱意に裏打ちされたものであるべきと考えています。

こちらの記事の監修医師

白石脊椎クリニック

白石建

白石脊椎クリニック院長
東京歯科大学市川総合病院整形外科客員教授
中華人民共和国大連市第2人民病院整形外科客員教授
日本脊椎脊髄病学会名誉会員

1950年大分県生まれ。慶応大学医学部を卒業後脊椎専門医の道を選ぶ。1991年から3年間ロンドンに留学し、脊椎の権威ヘンリー・ヴァーノン・クロック氏に師事し、知識と技術を極める。その後、東京歯科大学市川総合病院勤務を経て、2016年、自由診療の白石脊椎クリニックを開業。

世界初、頸椎外科史上初めての「筋肉への低ダメージの手術」(白石法)を開発。NHK『きょうの健康』やTBS『これが世界のスーパードクター』に出演。

白石法は国際的にも高い評価を受け、アメリカ、ヨーロッパ、中国、東南アジアなど世界中で講演や依頼手術も行っている。2014年ベトナム・ホーチミン市から名誉市民を授与される。2015年国際頚椎学会学会長を務め、日本脊椎脊髄病学会の最優秀論文賞を受賞、さらには国際頚椎外科学会の最優秀演題賞を3回も受賞するなど、日本の低侵襲脊椎外科の第一人者である。

著書に『やってはいけない脊柱管狭窄症の治し方』(青春出版社)がある。
白石脊椎外科ホームページには脊柱管狭窄症に関するコラム記事、動画を多数掲載。

医療法人社団建松会 白石脊椎クリニック
東京都千代田区 新丸の内ビルディング 12階 1220区
電話 03-6551-2628