最終更新日:2023年2月23日
妊娠糖尿病の原因とは?食事管理や対策法について解説
こちらの記事の監修医師
麻布モンテアールレディースクリニック
山中智哉
妊娠糖尿病になると、妊婦だけではなく胎児にまで影響が及ぶと言われています。妊娠糖尿病の原因を理解して、可能な限り予防に努めたいところです。そこで本記事では、妊娠糖尿病の原因について詳しく解説。食事管理や食べ方の工夫などの対策法についてお伝えします。妊娠後の血糖が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
妊娠糖尿病とは
妊娠糖尿病とは妊娠後に、はじめて判明した糖尿病を指します。そのため、妊娠以前から糖尿病だった場合や、高血糖の原因が妊娠に依らない場合は妊娠糖尿病には含まれません。
妊娠糖尿病になると、胎児も高血糖になり、さまざまな合併症が起こると言われています。最悪の場合、胎児の死亡に至るケースがあるため、しっかりと病院で治療を受ける必要があります。
妊娠糖尿病の原因にはホルモンが関係
妊娠すると血糖値を上昇させる作用のあるホルモンが分泌されます。たとえば、次のようなホルモンが妊娠糖尿病に関係します。
- ヒト胎盤性ラクトーゲン
- プロゲステロン
- プロラクチン
妊娠中に以上のホルモンが分泌されると、インスリンが効きづらくなり血糖値が上昇。つまり妊娠中は、糖尿病を発症しやすい体質になるのです。
妊娠糖尿病の生活習慣における原因
妊娠糖尿病も通常の糖尿病と同じく、次のような生活習慣における原因も考えられます。
- 過度にストレスを抱えている
- カロリー過多の食生活を送っている
- 甘いものを摂り過ぎている
各項目について詳しく解説します。
過度にストレスを抱えている
ストレスは糖尿病のリスクを上昇させると言われています。なぜなら、ストレスを抱えると交感神経が優位になり、次のような血糖値を上昇させるホルモンが分泌されるからです。
- グルカゴン
- アドレナリン
- 甲状腺ホルモン
- コルチゾール
血糖が上昇しやすい妊娠中にストレスを抱えると、以上のようなホルモンが分泌され、さらに糖尿病を発症するリスクが高まります。そのため、妊娠糖尿病を発症しないためには、ストレスケアを行うことも重要だと考えられます。
カロリー過多の食生活を送っている
妊娠糖尿病になりやすい食事は、カロリーが高い傾向にあります。そのため高カロリー食ばかりを摂る人は、妊娠糖尿病にかかり易くなるため注意してください。
妊婦は胎児の成長のために、通常よりもカロリーを多く摂った方が良いと言われています。しかし、カロリーの摂り過ぎは禁物です。妊娠糖尿病を避けるためにも、摂取カロリーをコントロールしましょう。
甘いものを摂り過ぎている
糖尿病の多くは、食生活の乱れが原因で起こります。とくに、甘いものを摂り過ぎるような食生活は改める必要があるのです。また、多くの糖質を含む炭水化物の過剰摂取にも注意が必要です。炭水化物から摂取する糖質を減らすには、白米を玄米に置き換えるなどの手段があります。
次に、妊娠糖尿病を予防するための対策について詳しく見ていきましょう。
糖尿病への対策|妊娠中に必要な食事管理
妊娠糖尿病の検査にひっかからないためには、カロリーのコントロールをしたり、食事の摂り方を工夫したりすると良いです。ここでは、妊娠中に必要な食事管理について詳しく解説します。
カロリーのコントロールする
妊娠中は糖尿病のリスクを避けつつ、胎児の発育のためのエネルギーを摂る必要があります。妊婦が摂るべき適切なカロリーは、次の式で計算可能です。
妊婦が摂るべき適切なカロリー=身長から計算した標準体重(身長(m)の二乗×22)kg×30kcal+妊娠後に必要な追加カロリー
「妊娠後に必要な追加カロリー」に当てはまる数値は、以下を参考にしてください。
妊娠期間 | 追加するカロリー |
妊娠後~16週未満 | 50kcal |
妊娠16週~28週未満 | 250kcal |
妊娠28週以降 | 500kcal |
妊娠期間に応じて、必要なカロリーが変化するのもポイントです。妊娠期間に適したカロリーを摂取しましょう。
低GI食を中心に摂る
低GI食とは、食べた後に血糖値の上昇を緩やかに上昇させる食品です。糖尿病になるのは、急激に血糖が上がることで、インスリンによる処理が間に合わないことが原因です。
血糖値を下げるインスリンの作用が行き届かずに、高血糖の状態が続いてしまいます。
そこで、低GI食で糖質を補うようにすると、食後の血糖値が緩やかに上昇します。そのため、血糖上昇に対してインスリンが正常に作用します。高血糖の持続も避けられるため、糖尿病のリスクも減らせるのです。
炭水化物は食事の最後に食べる
妊娠糖尿病を防ぐためには、炭水化物を最後に食べると良いでしょう。その理由は次の通りです。
- 食物繊維が糖質の吸収を緩やかにするから
- 糖質が低い食品で胃を満たせるため、炭水化物の摂り過ぎを防げるから
- たんぱく質を先に摂ると、血糖値を下げるインクレチンの分泌を刺激できるから
食事中に白米を摂り過ぎてしまう人は、最後に食べるようにしてみてください。
妊娠糖尿病が原因でおこる病気や症状
妊娠糖尿病になると、妊婦だけではなく、胎児にも影響が及びます。ここでは、妊娠糖尿病によって起こる症状を、妊婦と胎児に分けて詳しく解説します。
妊婦に起こる病気や症状
妊娠糖尿病で妊婦に起こる病気や症状は次の通りです。
- 流産や早産
- 妊娠高血圧症候群
- 膀胱炎や腎盂炎などの感染症
- 羊水過多
- 血管障害
- 網膜症
- ケトアシドーシス(急性代謝異常)による脱水や意識障害、昏睡症状
妊娠への影響に加えて、通常の糖尿病による症状も発症します。
胎児に起こる病気や症状
妊娠糖尿病で胎児に起こる病気や症状は次の通りです。
- 先天奇形
- 発育遅延
- 巨大児
- 新生児低血糖
- 子宮内胎児死亡
- 新生児ビリルビン血症
- 低カルシウム血症
- 呼吸窮迫症候群
- 心臓の肥大
- 多血症
- 黄疸
- 電解質バランスの異常
また、妊娠糖尿病の妊婦から生まれた幼児は、肥満体質になりやすいとも言われています。胎児がエネルギーを過度に吸収して大きくなり過ぎてしまい、難産になるリスクもあるのです。
妊娠糖尿病についてのQ&A
ここでは、妊娠糖尿病について寄せられる次の質問にお答えします。
- 妊娠糖尿病になりやすいのはどんな人?
- 妊娠糖尿病になると病院ではどんな治療を受ける?
- 食事制限で注意すべきことは?
分かりやすく解説しますので、参考にしてください。
妊娠糖尿病になりやすいのはどんな人?
妊娠糖尿病になりやすい人の特徴は、次の通りです。
- ストレスを抱えている人
- 妊娠以前から肥満傾向にある人
- 糖尿病の近親者がいる人
- 4,000g以上の巨大児を出産した経験がある人
- 35歳以上で妊娠した人
また、妊娠糖尿病の疑いがあり精査したほうがいい人は次の通りです。
- 羊水が多いと医師に指摘された人
- 胎児が大きいと医師に指摘された人
以上に該当する人は、妊娠糖尿病にかかりやすい、かかる疑いがあるため、食事管理を実践することをおすすめします。
妊娠糖尿病になると病院ではどんな治療を受ける?
妊娠糖尿病になると、まずは食事療法で血糖値を目標まで下げるように試みられます。食事療法で血糖値を目標まで下げられない場合は、インスリン治療が施されます。
糖尿病の治療には経口血糖降下薬が処方されることもありますが、胎盤を通して胎児に影響を与える可能性があります。そのため、妊娠時には胎盤を通過しないインスリンを使った治療が基本となります。
食事制限で注意すべきことは?
妊娠中の食事制限で注意すべきことは、低血糖を起こさないことです。低血糖になると、意識を失うこともあります。
また、低血糖を繰り返すと胎児の発育不全にもつながる可能性があるため、注意が必要です。食事制限をする際は、医師に相談して安全な方法で実践するようにしましょう。
妊娠糖尿病の予防は食事管理が大切
妊娠中は血糖値を上昇させるホルモンが分泌されるため、妊娠糖尿病になることがあります。 妊娠糖尿病を予防するには、次のような食事管理や食べ方の工夫が大切です。
- カロリーをコントロールする
- 低GI食を中心に摂る
- 炭水化物を最後に食べる
実際に妊娠糖尿病になった場合は、医療機関の治療を受け、医師の指導のもと食事管理をしましょう。妊娠糖尿病は妊婦と胎児の双方に、悪い影響が出るため、産婦人科で適切な処置を受けることが重要です。
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こちらの記事の監修医師
麻布モンテアールレディースクリニック
山中智哉
【経歴】
1998年 山梨大学医学部 卒業
2002年 同大学医学部大学院 卒業
2019年 麻布モンテアールレディースクリニック 開院
[資格]
・医学博士
・日本産科婦人科学会専門医
・日本抗加齢医学会専門医
・米国ISFN認定サプリメントアドバイザー
・点滴療法研究会認定医
[所属学会]
・日本産科婦人科学会
・日本生殖医学会
・日本卵子学会
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