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最終更新日:2022年8月6日

〈なかなか治らない口内炎〉は要注意…年々増えている「舌がん」の危険な兆候【咬み合わせ専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
医療法人健幸会安藤歯科クリニック
安藤 正之

※画像はイメージです/PIXTA

いつの間にかできている口内炎。いつか治るだろうとつい放置してしまいがちですが、いつまでも治らない口内炎は、「舌がん」を疑ったほうがいいかもしれません。食生活が変化し、食事の際あまり嚙まなくなった現代では「歯並び」が原因で舌がんになる人が増えていると、医療法人健幸会安藤歯科クリニックの安藤正之先生はいいます。今回は、そんな現代の舌がんの原因と予防方法、口内炎との見分け方について詳しくみていきます。

若年者に急増する「舌がん」

まずお伝えしたいのは、現代の若年者の歯並びが、全体に小さくなっている傾向にあるという事実です。そして、舌がんになる外的要因(環境因子)の大きな原因は、2つの「持続した刺激」です。これは大きく分けて、お酒やタバコといった「化学的刺激」と虫歯や歯の尖りで舌などが擦過される(こすられる)「物理的刺激」の2種類があります。

私が学生だった30数年前、「口のなかのがん」というと「中年以降の男性の病気」というイメージがありました。患者さんの多くは時代的にお酒とたばこを日常的に嗜み、いまよりも歯の衛生に関する知識も不十分で、口中が不潔なためにかかってしまうというケースです。

しかし近年、驚くべきことに、お酒とたばこの習慣がなく口のなかもきれいな若年者に舌がんが増えてきています。

近年の場合、若年者の舌がんにおける原因歯がハッキリと特定できるケースが、東京歯科大学の口腔外科チームが2020年に発表した論文では9割にも上ります
※ 若年者扁平上皮癌の発症誘発因子の検討 口腔腫瘍32巻2号29~37頁2020

つまり、噛まないために歯並びが小さく狭くなったことが、若い方の舌がん増加につながっていると推測できるのです。

歯並びが”小さく狭く”変化している現代人

では、現代人はどのぐらい歯並びが小さくなっているのか、実際の写真でみてみましょう。便宜上、歯並びの幅の大小によって、大きく3つのスケールに分類しました。

[図表1]Ⅰ型の歯並び

[図表1]は、昔の日本人に多かった理想のケースです。これをⅠ型と分類しました。

みていただくとわかる通り、歯並びに十分な広さと幅があり、舌がゆったりと過ごすことができます。歯はきれいに直立しており、舌ストレス(舌への刺激)はほとんどありません。

そのため、肩こりや首のこりがあっても軽度の方が多く、大多数の方が治療の必要を認めません。

しかし、このケースは、筆者の患者さんではわずか7%しかいらっしゃいません。

[図表2]Ⅱ型の歯並び

[図表2]は、Ⅱ型と分類しました。Ⅰ型に比べアーチの幅は狭く、V字形の歯並びをしています。歯が内側に倒れこんでいて、舌に歯の痕がついているのがおわかりいただけるでしょうか?

この歯の痕が「舌ストレス」で、現代人の典型的な形です。筆者のデータでは、70%の方がこれに属します。

[図表3]Ⅲ型の歯並び

[図表3]は、V字の歯並びをさらに逸脱して、真ん中あたりの歯が舌側に倒れこんでいます。これをⅢ型と分類しました。

舌にもえぐれたような歯の跡がみえますが、これが強烈な舌ストレスとなっています。現代人の4人に1人がこのケースです。肩こりや腰痛などの不定愁訴も多く、矯正治療が必要なケースも多々あります。

しかし、この内側に突き出た真ん中あたりの歯は、肩こりや首のこりの原因にはなりますが、舌がんになる可能性でいうとほとんどありません。

というのは、舌がんの原因となる歯は、一番後ろの歯である「7番」が約30%、その1つ手前の「6番」が約70%と、ほとんどをこの後ろの2歯で占めているからです。

2週間経っても治らない口内炎は「舌がん」かも

舌がんは持続した歯の刺激によって起こる

舌がんの口のなかを模写したイラストでご説明します。

[図表4]舌がんになった舌①

[図表4]は、6番という後ろから2番目の歯が原因で舌がんになっています。6番の立ち上がった咬頭が、繰りかえし舌を刺激した結果、舌がんになってしまったのです。このように、通常の炎症であれば、2週間程度で治る傷がいつまでたっても治らない場合は、舌がんを疑ってみたほうが良いでしょう。

[図表5]舌がんになった口中②

[図表5]は、口内炎のようにみえます。真ん中の歯が1本抜けたままになっており、やはり後ろから2番目の歯である6番が原因歯となっています。歯が抜けたことで、より6番の出っ張りが強調されたのでしょう。

このように、舌がんとは、持続した歯の刺激によってなることが多いのです。

舌がんの予防方法

では、舌がんにならないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。

それには、どんな人が舌ガンになりやすいのかをまず知る必要があります。

舌ガンになりやすい人は、

①お酒とタバコの習慣がある
➁口のなかが不潔
③歯並びがせまい
④いつも歯が舌に当たっている
⑤常に同じ部位に口内炎ができている

といった特徴があげられます。

したがって、舌がんを予防するには、お酒とタバコの量をほどほどにし、お口のケアを丁寧に行うことが大切です。

また、歯並びが狭く歯が舌に当たっていて痛いのであれば、矯正治療で広げるのも1つの方法です。舌に当たる気になる歯があるなら、歯の形を変え、当たらないようにしておくといいでしょう。

要は、持続した化学的・物理的刺激を取り除けばよいのです。

「口内炎」と「舌がん」の見分け方

最後に、大まかな口内炎と舌ガンの見分け方をご紹介します。

1.境界線
口内炎は潰瘍の周りが赤く縁取りされるのに対し、舌ガンは境界がはっきりしない

2.期間
口内炎は最長でも2~3週間で治癒するため、1~2ヵ月経っても治癒しない場合は舌ガンを疑う

3.痛み
口内炎は強い痛みを感じるが、初期の舌ガンは自覚症状があまりない

4.しこり
舌ガンは潰瘍にしこりがある

しかし、これはあくまでおおよその見分け方であり、舌ガンなのかそうでないのかは、最終的には病院で切片を取り、細胞診断と生体組織診断をしなければ確定診断はできません。

そのため、後ろのほうの歯が当たって舌が痛い、口内炎がなかなか治らないといった場合には、自己判断をせずに、必ず専門である口腔外科を受診してください。

ところで、舌がんの原因が歯にある場合は、歯の形態を変え、舌に刺激がいかないようにすることが最も大切ですが、現在の歯科では、歯を削ることに抵抗のあるドクターが多く、これを理解してくれるドクターは自分で探すしかありません。

ともあれ、今後ますます増え続けていくであろう「舌ガン」。これからの時代は、その上手な対処法が求められています。

こちらの記事の監修医師

医療法人健幸会安藤歯科クリニック

安藤 正之

1987年東京歯科大学卒業。
1989年安藤歯科クリニックを東中野に開院。
1990年「咬み合わせと全身の関係」の研究を始め、整体・気功・オーリングテストなどを学び、様々な治療法を研究に没頭。
1996年歯学のみならず医学の視点から「咬み合わせと全身の関係」を追究するため、東京歯科大学の専攻生・社会人大学院生として、微生物・生理学・解剖学・生化学などを学びなおす。
1997年医療法人社団健幸会設立。
2007年千葉工業大学・大川茂樹教授とともに、「歯と音声の研究会」を立ち上げる。
2009年9月17日日本音響学会において、「咬み合わせ治療の発声への影響」のタイトルで日本音響学会に研究発表。(2018年11月現在、5回の発表実績)
2018年「舌ストレス・頬粘膜ストレス・リップストレス」及び「口腔ストレス症候群」という名称を確立。
2022年9月日本病巣疾患研究会の学会において、10日口腔ストレス症候群についての特別講演、11日は舌ストレスについてのシンポジウムにて座長を務める予定。
肩こり・首のこりを無くすため、医師・歯科医師だけでなく、患者さんサイドにも、舌ストレスを中心とした、口腔ストレス症候群の概念を広めている。

医療法人健幸会安藤歯科クリニック理事長・院長
厚生労働省研修指導歯科医
全身咬合学会会員
日本音声学会会員
日本音響学会会員
現在、東京歯科大学生理学講座専攻生として在籍中

■安藤正之のYouTubeチャンネル「舌ストレス改善委員会」
https://www.youtube.com/channel/UCC1PrnDqlVJguq2P75RmYQw/channels