オンライン診療対応クリニック病院検索・クリニック動画紹介のイシャチョク

  • 一般会員
  • 医師会員

イシャチョク

一般
会員
医師
会員

最終更新日:2022年7月27日

つい甘いものを食べちゃう…は栄養不足のサイン!? ムシ歯だけでは済まされない、砂糖の甘すぎる罠

こちらの記事の監修医師
吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック
吉田 格

(写真=PIXTA)

甘いものがないと死んじゃう!?

甘いものがなくては生きて行けない、死んじゃう…。

冗談で「死ぬ」という言葉をよく使うのが現代人。しかしこの場合、大袈裟ではなく本当にそう思っている人が多い、特に若い女子! そう、あなたの周りにもたくさんいるのではないでしょうか。

歯科医院では歯科衛生士がムシ歯予防のために、砂糖を控えるよう患者さんに説明します。しかし多くの場合すかさず「ムリ!」と返されます。

ところがその歯科衛生士も実は甘いものを手放せない…これでは説得力ゼロ! そもそも親身になれません。女性歯科医師も仕事だから仕方なく「甘いものは控えま…」と、語尾がフェードアウト気味。これが歯科医院アルアルなのです。

もちろんこれは女性に限った話ではないし、とりわけ女性にムシ歯が多いわけでもありません。しかし無意識に甘味に手を出す女性は多いもの。実はこれ、理論的に説明することができるのです。

ムシ歯だけでは済まされない、砂糖の甘すぎる罠と、その背景について書いてみます。

砂糖は、エネルギー源となる「三大栄養素」の一つだが…

皆さんは小学校の家庭科の授業で、三大栄養素というのを習いませんでしたか? 脂質・タンパク質、そして糖質ですよね。そして砂糖は糖質の一種でした。これらはみな、体のエネルギー源として利用できるという意味で使われ始めたそうです。

このうちタンパク質はエネルギー源になるにはなるのですが、他に大切な役割があるので、あまりそれに使いたくありません。

脂質はアブラですから、実はこちらを優先してエネルギーとして使ってもらいたいものです。ところが脂質をエネルギーにするには、そこそこ複雑な化学反応を経なくてはなりません。このとき中心的な働きをするのがミトコンドリアです。ミトコンドリアは赤血球を除くすべての細胞にある、強力なエネルギー産生基地で、三大栄養素はすべてここでエネルギーを産生します。

ところが、この化学反応がどうもうまく行ってない人が多いらしいことがわかってきました。

原因の一つが「鉄」の欠乏です。

砂糖を欲するのは「鉄不足」の証拠かも

鉄はミトコンドリア内でエネルギー産生に必須の元素。と同時に赤血球が酸素を運搬するのにも欠かせません。それが欠乏していくと、体は酸素運搬を優先させるので、ミトコンドリアへの鉄供給を減らします。

一般的には検査で貧血の数値が出なければ、鉄は十分だと解釈されます。しかし実はそれ以前に全身のエネルギー産生が落ちているのです。そしてこんなに重要な鉄なのに、足りない女性が驚くほど多いのです。

女性は生理で定期的に失血していく、つまり同時に鉄を失っていく宿命にあります。特に女子は10歳を過ぎると、生理が始まる・身長が急に伸びる・クラブ活動が始まる、などで栄養の需要が急に高まり、特に鉄が極端に不足します。

よく見れば鉄という字は「金偏に失う」と書きますから、昔の人は経験的にこのことを知っていたことになります。しかしその知識は現代人にまで受け継がれることはなく、失った鉄を食事で補充する機会は減る一方なのです。

こうなると脳へのエネルギー供給も制限され、倦怠感・思考停止・イライラなど、いわゆる不定愁訴が出やすくなります。

そこで登場するのが糖質、特に手軽に食べられる砂糖です。

鉄欠乏でもスピーディーにエネルギーを作れるのが「砂糖」

砂糖は分解されてブドウ糖と果糖になります。またブドウ糖果糖液糖という人工的に作った甘味料が入っている飲食材もたくさんあります。

これらはたいてい吸収が極端に速く、素早く血液に溶け込みます。さらにブドウ糖は細胞に入ると、極めてスピーディーにエネルギーを産生します。しかもその過程で鉄を必要としないので、鉄欠乏であっても、わずかながらエネルギーを産生できるのです。

問診をすると「仕事中、甘いものを食べると落ち着く」という女性はたくさんおられるのですが、いわば自衛策としての甘味という、生活の知恵(?)だったわけです。

そう、これは何とも都合のいい話ではありませんか! 結局鉄欠乏だから、エネルギー産生のために体が甘味を求めている、砂糖は女子の強い味方だったのです!?

…と喜ぶのは早合点、そんな単純ではないのです。ここから先、ムシ歯以外にも落とし穴がたくさん待っているのです。

砂糖を摂るとむしろ低血糖になる!?の不思議

砂糖のような比較的単純な糖質は、自然界にあっても食物繊維やミネラルなど、他の成分と一緒に存在します。そのため腸からの吸収速度は穏やかです。

しかし私たちが日常口にする砂糖は、工業的に精製し純度を上げたもの。この状態の砂糖は、人間の体が想定していた吸収速度を凌ぎ、急速に血管に入り鋭い血糖値のピークを作ります。これを食後急峻(きゅうしゅん)高血糖と呼び、血管の内壁に大きなダメージを与えます。

血糖値とはだいたい平時は95mg/dlくらいで安定しており、食後は1時間くらいかけて145mg/dlくらいまで上昇します。すると膵臓からインスリンが出て、その命令で筋肉や脂肪細胞に糖分が取り込まれます。結果として血糖値はまた元に戻る、学校ではそう教えます。ただしこれは昔ながらの食事を摂った場合で、精製された糖質が多い現代食ではこうなりません。

まず食後急峻高血糖になりますが、あまりに急すぎてインスリンが間に合わないことがあります。つまり糖尿病でもないのに、血糖値が145mg/dlをはるかに超えてしまう人がいます。

またあまりに急に血糖値が上がったので、膵臓が勢い余ってインスリンを大量に放出してしまうことがあります。こうなると血糖値は60mg/dlくらいまで急降下してしまいます。つまりマイナス側のピークもできるということです。すなわち砂糖を摂ると低血糖になるという、一見矛盾した現象が起きます。

実は体は血糖値の低下を生命危機と判断し、自前でブドウ糖を合成します。体はそういう仕組みを何通りか持っているのですが、緊急時に登場するのが、ご存じアドレナリンです。アドレナリンは古代から命をかけて敵と戦ったり逃げたりするときに、体の多くの機能をストップさせてまでして急いで血糖値を上げるための、緊急事態用ホルモンです。

そのおかげで低血糖は回避できるのですが、今度はそのアドレナリンも出過ぎてまた高血糖に、そしてまたインスリンが…を延々と繰り返します。

このときインスリンが出ながらアドレナリンも出ているという、アクセルを踏みながらブレーキもかけているような状態のときもあるそうです。ですから数値上低血糖にならないことも多いのですが、このとき脳は正常な思考が難しくなっていると予想されます。

この状態でさらに砂糖を摂ると、この乱高下は夜になっても収束しません。しかし食生活の問診をすると、そういう人が多いのです。

午後3時過ぎに眠くなる、イライラする…は低血糖かも

先日、研修のため9人の歯科医師に採血とその検査データー解析の実習をしたときのことです。

全員が同じ時間に同じお弁当を食べ、その3時間後に採血をしたのですが、するとほぼ全員が65mg/dl以下の低血糖状態になっていて驚きました。砂糖に限らず、白米など精製された炭水化物も、食後急峻高血糖の材料となってしまうのです。

低血糖はだいたい食後2~3時間後、昼食後であれば午後3時過ぎに発生します。この時間帯に急に眠くなることはありませんか? あるいは、ついイライラしてしまうことはないでしょうか? これは消化のために胃腸に血流が集中して脳血流が低下していることもありますが、それよりも低血糖のほうが疑わしいのです。

昼食がパスタなどの炭水化物中心で、一緒にオレンジジュースでも飲めば、前述のような血糖値の乱高下がおきていることは十分予想されます。

男性も女性も午後の会議が眠くてしょうがないという方は多いと思いますが、試しに昼食からごはんや麺類を抜いてみてください。パフォーマンスが改善するようであれば、原因は血糖値の乱高下です。

現代食は血糖値の安定化がとても難しいものが多いことがわかると思います。

夜間低血糖とハギシリ

血糖値の乱高下は、内科に依頼して「ブドウ糖負荷試験」というもので診断してもらうことができます。ただし低血糖は食後2時間以後に現れるので、高血糖を調べるための2時間検査では発見できません。そこでこれを5時間まで延長するのですが、時間的にけっこう大変です。

そこで私は簡易型の持続血糖測定器をおすすめしています。これは二の腕に専用のセンサーを貼り付け(写真1)、スマートフォンで2週間分の数値を読み取るというもので、¥8,000ほどと安価です。

 

[写真1]持続血糖測定器のセンサーを装着した状態

 

本当は血糖値ではなく、筋肉中の間質液というものを測定対象にしているので、数値は正確ではありません。しかし何を食べたら急に上がるのか、就寝中や運動時はどうなのか、傾向を知ることはできます。

すると夜間から早朝にかけて、かなり低血糖になっている人が多いことがわかります。その一例が写真2の赤い部分です。

 

[写真2]夜間から早朝にかけて低血糖になっている

 

早朝はコルチゾールというホルモンが副腎というところから分泌され、これも血糖値を上げる作用があります。ところがこの方は、それがうまく機能していないようです。

実はコルチゾールはストレスに抵抗するためのホルモンでもあります。しかしストレスフルな生活をしていると、脳からの命令系統(HPA軸と言います)がうまく働かず、コルチゾールも出づらくなります。これが俗にいう「副腎疲労」という状態で、そのため就寝中にも関わらずアドレナリンが出てしまう人もいます。

寝ているのに緊張状態になるわけですから、寝汗をかいたりハギシリをしているかもしれません。写真3は歯を守るために夜間装着してもらっていたマウスピースですが、たった1週間でハギシリによる派手な傷を刻んできました。

 

[写真3]ハギシリで傷ついたマウスピース

 

そしてこの方の早朝空腹時採血をすると、朝食を摂っていないにも関わらず、インスリンが高値でした。すなわちアドレナリンによる高血糖が起きていたと予想されるのです。このような例は決して珍しくなく、かなりの人が寝ているのに緊張状態になっていると考えています。

将来的にはスマートウォッチだけで血糖値が測れる時代が来ると思われますので、高血糖だけでなく低血糖の実態も明るみになるでしょう。

夏バテは低栄養のサイン

以上のように、普段から甘味を食している人は鉄だけでなく、糖質以外のすべての栄養素が不足傾向にありそうです。いわゆる低栄養が密かに進行していた、飽食の時代といわれていたのに、真逆の事態です。

特に最近は在宅勤務になり、人目を気にしないで済むのをいいことに、常にお菓子を片手にPCに向かっている人が増えてしまいました。こうなると口の中は酸性に傾きっぱなしで、今までにないほど急速にムシ歯が進行します。

さらにはお菓子でお腹がいっぱいになり、普通の食事量が摂れなくなると、低栄養はさらに加速します。低栄養の初期にはなんとか砂糖などの炭水化物で繋いでいましたが、それをエネルギーに変換するのに必須のビタミンB1の供給もなく、どんどん枯渇します。ついには最後の砦である砂糖もエネルギーにできなくなる、そこで発症するのが夏バテです。

夏バテはあまりに一般的で、異常を異常と思わない人が多いのですが、これは立派な低栄養です。暑いからと喉越しのよいそうめんだけに…となったらアウト、スポーツドリンクのガブ飲み・かき氷のシロップもアウトです。

そもそも夏バテとは何でしょう? 暑くなれば食欲がなくなって当然なのでしょうか? もしかしたらそれはあなたが普段から食べているものに原因があったのかもしれません。

夏休み明けの子供の不登校は、案外こんなところにも原因があるのではないでしょうか。そしてその危険信号を最初にキャッチできるのが、実は歯科医院なのです。歯科医院で定期メンテナンスを受けていて、担当の歯科衛生士に知識と洞察力があれば、未然に知ることができるのです。

タンパク質を増やすと甘いものがいらなくなる…の不思議

コロナ禍以後、抗うつ剤を処方されている人が増えた感があります。これでは倦怠感で歯を磨く気にもなれません。そんな方の食生活を聞くと、甘味に依存していることがほとんどです。しかも本人はそこに疑問を持つどころか、人生の憩いの時間を築いています。麻薬と同じです。

だから「甘いものはやめましょう」と指導してやめられる人はいません。

そこで私がおすすめするのが、豆魚肉などでタンパク質を少しずつ増やしていくことです。低栄養の方はだいたい胃腸機能も低下し消化不良を起こしやすいので、最低でも30回は噛むようにお話します。歯はそのために治すというスタンスです。

すると、タンパク質以外の栄養素も摂れるので、エネルギーを砂糖に頼る必要がなくなり、思考も改善します。そして面白いことに、いつのまにか甘いものなど見向きもしなくなるのです。少なくとも私の経験では、女性の半数以上はそうなり、減量にも成功しています。

罠はいつだって甘いもの

私が子供のころ見た栄養剤のCMに「朝起きたら肩が凝っていて辛い人のために!」という件がありました。子供心になぜ朝肩が凝っているのかとても不思議だったのですが、今思うとこれは夜間低血糖によるアドレナリンで肩に力が入っていたのではと考えています。

そう、日本人は50年以上も前から糖質過多と過緊張が当たり前の生活になっていたのではないでしょうか。そしてストレスフルな生活環境が加速し、砂糖に依存するライフスタイルから抜け出せない人が増えていると。

歯科は砂糖の害を最も簡単に訴えることができる立場にあります。砂糖はこの他にも糖尿病や肥満の原因はもちろんのこと、腸でカンジダというカビを増やし炎症を起こしたりと、付き合いの難しい栄養です。

仕事上がりの自分へのご褒美にと、毎日スイーツを楽しみにしている人はいませんか?

そう、罠はいつだって甘いに決まっているのです。

こちらの記事の監修医師

吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック

吉田 格

幅広い知識・技術を中立的な立場から提供する、歯科自由診療専門医。
レーザー・顕微鏡・栄養療法を歯科医療に取り入れ、健康保険だけでは解決困難な治療を手がける。

1985年 日本歯科大学新潟歯学部卒
1997年 吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック開設(東京都中央区)

【所属】
日本レーザー歯学会 (認定医 理事)
日本顕微鏡歯科学会 (認定指導医 理事)
日本抗加齢医学会(指導医)
臨床分子栄養医学研究会(認定指導医)


【著書】
『インプラントのすべてがわかる本』(保健同人社)