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最終更新日:2022年8月25日

ムシ歯予防だけではない!歯磨きが「胃のため・腸のため・脳のため」になる“これだけの理由”

こちらの記事の監修医師
吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック
吉田 格

(写真=PIXTA)

歯磨きは、ムシ歯予防のみならず、胃や腸、さらには脳のためにもとても重要であることがわかってきました。吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック代表・吉田格氏が、歯磨きと全身の健康の関係を解説します。

歯磨きをするのは何のため?

みなさんはもちろん今日、歯を磨きましたよね。では何のために歯を磨いたのでしょう?

普通に考えればムシ歯や歯周病予防のため・デートの前だから…中には美人の歯科衛生士さんから歯をちゃんと磨きましょうネ♡と言われたから、って人もいるかもしれません。

これらは確かに重要なのですが、最近はそれ以外にも、胃・腸、さらには脳のために、歯磨きはとても重要だということがわかってきました。いったいどういうことなのかについて書いてみます。

アルツハイマー病患者の脳から歯周病原菌が見つかった

近年の医学界での大きな課題の一つに、アルツハイマー型の認知症があります。

同じく大きな課題であるがんには治療方法がいくつもあり、それによる生還者も多いばかりか、稀にですが自然に治る人もいます。

しかしアルツハイマー病に有効な治療方法はないに等しく、患者数は増える一方で、大きな社会問題になっています。

その原因は脳内にアミロイドβという物質が蓄積するからと考えられており、それをターゲットにした薬がいくつか研究されてきました。

しかしどれも結果を出せずに頓挫しており、本当にアミロイドβが原因なのかとの疑問の声も多く上がっています。

その後の研究で、死亡したアルツハイマー病患者の脳を調べてみると、代表的な歯周病原菌であるP.g菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス菌)をはじめ、口の中にしかいないと思われていた細菌数種類が見つかったのです。

これはいったいどういうことなのでしょう? そしてもしかしたら、このP.g菌がアルツハイマー病の原因ではないのかと、研究が始まりました。

歯周病原菌はどうやって脳に侵入したのか?

口と脳は距離的には近いですが、その間には骨の壁がありますから、そこをマジックのようにすり抜けてP.g菌が脳に侵入することはありません。まずは血管の中に入り、血流に乗って運ばれる必要があります。

実は歯周病になると歯肉の中(歯周ポケット)が潰瘍になり、破綻した血管から細菌は容易に侵入します。この状況を菌血症と言います(金欠症ではないですよ)。

また菌血症は、進行した歯周病でなくても起きます。たとえばケガをして擦りむいたときも同様ですし、歯を磨いたときも、さらには歯内治療(根管治療)で必須のラバーダムを装着するときにも発生します。

献血をするときに最近歯石を取ってないかを訊かれるのは、菌血症になっている可能性が高いからです。

とにかく歯の周りにいる細菌は、ちょっとした外力で意外に簡単に血液中に流入することがわかっています。

歯を磨いただけで菌血症になるのなら磨かないほうがいいかといえば逆で、菌の量は少ないほうがいいので、やはり毎日の正しい歯磨きは欠かせません。

さてそれでも、細菌が脳にまで入り込むとは考えられていませんでした。

なぜなら脳に入る血管には、血液脳関門(けつえきのうかんもん)というバリヤーがあり、不要なものをシャットアウトしているからです。

そもそも脳細胞には他の細胞には備わる解毒機能がないので、事前に対策しているわけなのです。

しかしどうやらP.g菌が作るジンジパインという毒素がバリヤーを破壊し、脳内に侵入するらしいのです。

口の中の細菌は「腸」にまで達していた!

歯周病原菌に限らず口腔内の細菌は、以下の3つの方向に流れて全身に悪影響を及ぼします。

 

1. 歯周ポケット・根尖病変・手術などの傷口から血流に入り全身へ

2. 唾液を誤嚥し気管~肺へ

3. 飲み込んだ唾液内の細菌が胃酸で死滅せず、そのまま小腸大腸へ

 

1は先に説明した菌血症のことです。この細菌が増殖して発熱すると、敗血症と言ってたいへん危険な状態に陥りますが、免疫が正常であればそのようなことはなく、よほどのことがない限り問題になりません。

しかし菌血症が落ち着くまでには数日かかるので、その間にどこかに定着する可能性があります。その場所が脳であることもあるわけです。

2はよく知られている誤嚥性肺炎です。高齢者において夜間に唾液が気管に流入し、肺炎を起こすのがこれです。介護のヘルパーさんに歯磨きを徹底していただくことで、かなり予防できることがわかっています。

3は目新しい事実です。私たちは1日にだいたい1.5Lもの唾液を飲み込んでいますが、その中には当然口の中の細菌が混入しています。そしてそれらは胃酸で殺菌されるので、腸にまで届くはずはないと考えられていました。

しかし検査方法が発達すると、意外にも口腔内細菌と同じものが大腸からも検出されるようになりました。

また本来そう多くの細菌がいるはずのない小腸にも、細菌が過剰に増殖している人が多いこともわかってきました(SIBOと言います)。食後すぐに膨満感が出る人は、その可能性があります。

さて現代人の胃腸には、いったい何が起きているのでしょう?

胃酸抑制剤を飲み続けるリスク

お薬手帳が普及したおかげで、私たちは患者さんの服薬歴が初診時にわかるようになりました。

これを見ていると、胃酸抑制剤を長期間服用し続けている人がとても多いことに気づきます。これは胃の不快症状にはとてもよく効くポピュラーな薬で、同じ用途の薬は一般市販薬としても広く流通しています。

ところがこの薬は読んで字のごとく、胃酸をストップさせるので、胃の本来の役割であるタンパク質の消化(分解)ができません。

と同時に、すでにお気づきのように、口から落ちてきた細菌を十分に殺菌することができなくなります。ですから未消化物と細菌が、そのまま腸に移動します。腸の中は温度36℃で湿度100%ですから、生き残った細菌は未消化物をエサに、喜んで小腸で増殖します。

では胃酸抑制剤を飲んでいなければ心配ないのでしょうか? どうもそうは言えないようです。

図表1は、よく胃がん検診で用いられるペプシノーゲンという検査の結果です。このうちペプシノーゲン1が胃酸の出具合の指標なのですが、70くらい欲しいところが半分もない人がほとんどです。

 

[図表1]ペプシノーゲン検査の一例
ペプシノーゲン検査は胃がん検診でよく行われますが、ここでは胃酸の量を反映するペプシノーゲン1を診ます。
70はほしいのですが、ほとんどの人が30以下と、かなり不足しており、胃酸不足による消化不良が疑われます。

 

そもそも食事でのタンパク質摂取量が少ない人が多いのですが、それを原材料にしているペプシノーゲン1も連動して低下すると言われています。

ではそれを増やすためにタンパク質を増量すると、消化不良でタンパク質を利用できないというジレンマが生じます。

この状態でもし胃酸抑制剤を使ってしまうと消化不良はさらに助長され、体調不良の沼に落ちることになります。

しかしそれを知らずに服用している人が少なくありません。これは、歯科医院であっても問診で気づくことが多いのです。

リーキーガットとリーキーブレイン

今日、様々な検査診断ができるようになり、先ほどの未消化物が血液中から検出されることもわかってきました。

腸は本来、必要な栄養素をキャッチし体内に取り込む一方、不要なものはそのまま通過させ、大便として排出するようにできています。

しかし血液中に余計なものが検出されるということは、先ほどの血液脳関門と同じように、フィルターが破綻している状況が腸にも起きていることになります。

これが俗にいうリーキーガット(正式には腸管壁浸漏〔ちょうかんへきしんろう〕症候群と言います)で、本来強固に結合しているはずの腸の細胞同士が炎症などで緩み、リークしている状態です。

またカンジダというカビが過剰な糖質をエサに増殖すると、腸壁を貫通するように根を生やすので、同じくリーキーガットになります(図表2)。

 

[図表2]尿中有機酸検査
尿中有機酸検査というものを行うと、酒石酸とアラビノースがとても高く出てくる人がいます。この2つは生体では作られない物質で、主にカンジダというカビが腸内で過剰に増殖すると上がってきます。原因不明の疲労がある人には、専門家の管理のもとで減菌対策をおすすめすることがあります。

  

このときゾヌリン(図表3)という物質が腸から血液中にも放出されるのですが、この量が多いと前出の血液脳関門も障害される可能性が上がります。俗に言うリーキーブレインです。運悪くそこにP.g菌が流れてくれば、ジンジパインの力と相まって、脳内に流入することになってしまいます。

 

[図表3]ゾヌリン
ゾヌリンはリーキーガットになると血液中や大便中で増えてくることがあります。食生活などの改善で不定愁訴が治らない人に検査をおすすめすることがあります。

 

以上はまだ仮説の段階ですが、論理的に説明できるだけに、アルツハイマーや不定愁訴の解決や予防に真剣に取り組む医師の間ではよく知られていることです。

「生きた菌」も「死んだ菌」も体に影響を与える

さて腸にまで達した口腔内細菌はどうなるのでしょう。

腸内にはよく便宜上、善玉・悪玉・中間の3種類の菌がいると言われます。それらの総重量は1~1.5kgもあり、人体に必要な栄養素を作ったり免疫を担ったりと、一つの臓器と言っていいほど重要な役割を持っています。

口腔内細菌はだいたい、腸内では悪性に働き炎症を起こしますので、リーキーガットの一因になっている可能性があります。

するとその量は少ないほうがいいので、歯磨きで細菌数を必要以上に増やさないことは、胃腸を助ける意味でも重要です。

さらによく噛むことで食材を粉砕すれば、胃酸や消化酵素との接触面積が上がり、未消化物を減らすことができます。

それと同時に、善玉菌は日常的にどんどん追加していきたいところです。昔の食生活なら、味噌や漬物から善玉の代表格である乳酸菌を摂取することができました。

しかし最近は漬物を食べる機会が少ないばかりか、あってもそれは漬物風味の調味料に浸した野菜が多く、乳酸菌の供給源としては期待できません。ちゃんとした味噌汁を飲む機会も少なくなっています。

そこで市販されている乳酸菌やビフィズス菌製剤の出番になります。

このときよく議論になるのが、「生きた菌でなくては意味がない」「生きた菌を飲んでも胃酸で死滅するから意味がない」という相反した理論です。

しかし実際にいろいろ使っていただくと、生きた菌も死んだ菌も、両方とも効果があります。結局はどちらでもいいようです。

そうすると、以下のような疑問が沸きます。

死んだ乳酸菌でもいい効果があるということは、胃酸で死んだ口腔内の悪性菌の残骸でも腸に悪影響があるのでは、ということです。

するとその量はできるだけ少ないほうがいい、したがってたとえ胃酸が十分であっても、やはりよく歯を磨いて胃に落ちる細菌の量を減らすことは全身の健康のためにとても重要、とならないでしょうか。

歯磨きは全身の健康に関わる…歯科医療の新たな役割

2年ほど前にとあるメーカーさんのご厚意で、P.g菌のPCR検査キットを無料で10名分いただいたことがありました。

さっそく私が発行するメールニュースで検査希望者を募ると、数時間で枠が埋まってしまいました。

すごい反響だなと思い、その後選外になった数十名の方に正規料金で検査をおすすめしました。しかしそれに対しては、誰一人希望者はおられませんでした。

結局みんな無料という言葉に釣られただけで、この検査の真意を浸透させないことには意味がないとわかり、この記事を書きました。

書籍『アルツハイマー病真実と終焉』(デール・ブレデセン著、ソシム株式会社刊)によれば、アルツハイマー病の原因は36あり、それらを一つずつ潰していくことで解決の路が開けるとしています。

P.g菌もその一つなので、ジンジパインを分解する薬を作れば、認知症が改善するとの期待があります。

しかしたった一つの原因を除去するだけで、アルツハイマー病が改善するとは思えません。同時にリーキーガットの改善や、水銀などの解毒も視野に入れる必要があります。

近年歯磨きの重要性やよく噛むことの全身への効果は、少しずつですが医師の先生方にも認知されはじめ、歯科も全身疾患の治療の一翼を担うようになってきました。

口腔内細菌にはまだまだ、大腸がん・潰瘍性大腸炎・動脈硬化などとの関係も指摘され研究が進んでいます。

またすでに糖尿病治療は、歯周病を治すことで相乗効果が出ることがわかっていますし、ムシ歯にしか関与していないと思われていたミュータンス菌も、脳卒中との関連性が指摘されています。

さあ、あなたも今日から新たな目的意識を持って歯を磨いてみませんか? ただし自己流の自己満足では、まったく効果は期待できません。

以下の動画を参考に、全身疾患にも詳しい歯科医院で正しい歯の磨き方を練習し、将来に備えましょう!

 

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こちらの記事の監修医師

吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック

吉田 格

幅広い知識・技術を中立的な立場から提供する、歯科自由診療専門医。
レーザー・顕微鏡・栄養療法を歯科医療に取り入れ、健康保険だけでは解決困難な治療を手がける。

1985年 日本歯科大学新潟歯学部卒
1997年 吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニック開設(東京都中央区)

【所属】
日本レーザー歯学会 (認定医 理事)
日本顕微鏡歯科学会 (認定指導医 理事)
日本抗加齢医学会(指導医)
臨床分子栄養医学研究会(認定指導医)


【著書】
『インプラントのすべてがわかる本』(保健同人社)