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未熟児網膜症【イシャチョク】

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最終更新日:2022年3月31日

みじゅくじもうまくしょう 未熟児網膜症

こちらの記事の監修医師
スマイル眼科クリニック
岡野 敬

概要

網膜とは目の内側にあり、目の中に入ってきた光が像を結ぶ薄い膜組織です。網膜血管は胎生16週頃に進展し始め、胎生36~42週頃に完成します。しかし網膜の血管が完成する前に産まれた未熟児は、その後網膜血管が枝分かれしたり、眼の中心の方へ立ち上がったりと、異常な方向に増殖することがあり、これを未熟児網膜症といいます。異常増殖が進行すると、網膜を牽引して網膜剥離を起こし、重篤な視力障害や失明を引き起こします。多くは軽症で治療を要さず、自然に治癒しますが、重症化すると視覚障害が残ることが多い疾患です。さらに未熟児網膜症は、在胎週数が短いほど、出生体重が軽いほど高率に発症し、重症になりやすい傾向があります。近年は周産期医療の進歩により、これまで生存が困難であったような児も助かるようになったことで、低出生体重児の割合および出生数は増加しています。その結果、重症の未熟児網膜症も増加傾向にあり、未熟児網膜症は小児の失明原因の第一位を占める疾患となっています。

原因

血液による網膜に対する酸素供給が安定した母体内から外界へと環境が変化したことにより、児の網膜血管は成長先端部で成長を休止します。成長が途中で休止したために血管成長が起こらなかった網膜組織は酸欠になりVEGF(血管内皮増殖因子)が発生し異常な新生血管の発生を促します。発生した新生血管はやがて硝子体内へと進展し、進行すると新生血管が増殖組織を伴い、それが収縮することで網膜が引っ張られ、牽引性網膜剥離が生じます。また、早産児や低出生体重児への酸素投与により、新生児死亡率や神経学的後遺症の発症率が下がるため、酸素投与が行われることがありますが、その酸素が相対的に高濃度の場合に未熟児網膜症を誘発するとされています。

症状

未熟児網膜症を発症しても特に外見上の変化はみられません。未熟児網膜症は、徐々に進行するⅠ型と、急速に進行する劇症タイプのⅡ型に分類されます。さらにⅠ型は進行の程度により5つの病期に分類されます。第1段階では、網膜内の新生血管の先端部と無血管帯との境界部分に境界線とよばれる組織ができます。第2段階では、境界線の厚みが増し、第3期では境界線が増殖して硝子体内部に伸びていきます。第4期には増殖組織が網膜を引っ張り牽引性網膜剥離を引き起こし、第5期には全網膜剥離へと進行します。一方でⅡ型は、特に在胎週数が少ない超低出生体重の新生児に起こりやすく、急速に網膜剥離へと進行して失明する危険が高いです。

検査診断

眼底検査にて網膜内の新生血管や境界線の形成、増殖性変化や網膜剥離を認めます。未熟児網膜症を発症しても特に外見上の変化はみられないため、診察や検査なしで本症に気が付くことは困難です。

治療

未熟児網膜症の治療では、無血管帯への網膜光凝固を行います。その他、網膜剥離に対して早期に硝子体手術を行うこともあります。また抗VEGF薬の投与を検討する場合もあります。Ⅰ型では自然治癒の傾向があるため経過観察することもありますが、Ⅱ型では速やかに治療を行います。

予防/治療後の注意

未熟児網膜症が自然治癒する程度であった場合は、視力への影響はないとされます。ただ未熟児は近視や乱視、斜視があることもあり、また脳の疾患も併発している場合はそれによって視力の発達が妨げられることもあるため、定期的に眼科受診を受けることが望ましいです。程度が重く治療を要した場合は、その程度によって視力の予後は様々です。網膜の中心部にある黄斑部が障害されなければ、日常生活で困らないくらいの視力にはなりますが、それでも近視になることが多いです。しかし黄斑部にまで病変が及んだ場合や、網膜剥離を起こした場合などは、高度の視力障害をきたします。また、治療を要するレベルの未熟児網膜症を発症する児は、全身的な発育遅延や障害を持っていることが多く、視力障害は未熟児網膜症だけが原因でないこともありますので、定期的に医療機関にかかることが望ましいです。

こちらの記事の監修医師

スマイル眼科クリニック

岡野 敬

〇診療科 :眼科

【経歴】
平成9年 杏林大学医学部卒業。
杏林大学病院アイセンター、公立阿伎留病院眼科、志和眼科医院、都南眼科、みたけ眼科、やはば眼科院長として勤務し、外来診療と手術を行う。
平成14年9月より、横浜市青葉区のスマイル眼科に勤務。
平成15年1月よりスマイル眼科クリニック院長。

【専門】
専門は、前眼部疾患、緑内障、ドライアイ、アレルギーなど一般眼科外来と、小児眼科、コンピュータ支援医療。

【所属学会】
日本眼科学会、日本眼科医会、ドライアイ研究会、日本LIME研究会、近視学会、東洋医学会会員。

【趣味】
旅行、電子工作、ワイン、コーヒー、料理など。

【資格】
日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、PADIオープンウォーターダイバー、アマチュア無線4級保持。

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