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最終更新日:2022年11月18日

しんげんせいのうそくせんしょう心原性脳塞栓症

こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター大橋病院
中山 晴雄

概要

脳を養う血管が閉塞し、詰まった部分の血管に血液が流れなくなる病気を、脳梗塞といいます。血が流れなくなった部分の脳は死滅して、元々もっていた機能を失ってしまいます。詰まった血管や死滅した脳の範囲に応じて様々な症状が現れ、生命に関わることもあります。脳梗塞の種類は大きく分けて、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症の3つに分類されます。そのうち「心原性脳塞栓症」は、心臓に血栓という血の塊ができて、それが心臓から飛んで血液を通して脳へ運ばれて、脳血管を詰まらせることで起こります。脳梗塞の15~20%がこの心原性脳梗塞といわれています。他の2種類の脳梗塞は、生活習慣病の進行により動脈硬化が徐々に悪化して起こりますが、心原性脳梗塞は前ぶれもなく突然発症し、また梗塞範囲が広いことが特徴です。明らかな麻痺や意識障害を起こしやすく、再発の可能性も高いため、命に関わる危険な脳梗塞です。

原因

心原性脳塞栓症は60歳以上の人に発症しやすいとされています。原因として最も多いのは、心房細動という不整脈です。心臓が不規則に小刻みな動きをするため、心臓内部の血流が澱み、血栓とよばれる血の塊を形成します。この血栓が血流に乗って脳血管に流れていくと、脳血管が詰まって脳梗塞を起こします。しばしば大きな血管が詰まってしまい、突然大きな脳梗塞が出来ることになります。また、稀に心臓以外にも塞栓源となる血栓が存在することがあります。

症状

心原性脳塞栓症により、内頚動脈や中大脳動脈の本幹が閉塞すると、突然の意識障害に至ります。脳梗塞に陥った脳は徐々に腫れ上がり、数日後には脳のむくみや腫れはピークに達し、周囲の健常な脳を強く圧迫するようになり、脳ヘルニアに至ります。脳ヘルニアが進行すると死亡するおそれもあり、心原性脳梗塞の死亡率は12%にも達します。また、脳梗塞が起こるのは巨大な脳血管だけとは限らず、小さな脳梗塞で済むこともあります。脳梗塞の出来た部位により、運動麻痺や感覚麻痺、呂律が回らなくなるなどの構音障害、言葉を理解できない・言葉を話すことができないなどの言語障害、物が見えにくい・二重に見えるなどの視野障害、高次脳機能障害、目眩やふらつき、嘔吐など、様々な症状があらわれます。

検査・診断

心原性塞栓の診断は、脳梗塞の分布や大きさのほか、塞栓の原因となりえる異常(塞栓源)の検索によってなされます。症状、CTやMRIによる画像検査、心電図検査、心エコー検査などによります。なお、心臓に異常がない場合には、下肢の静脈血栓などの可能性も考慮されます。

治療

心原性脳塞栓症の治療は、発症4.5時間以内の場合には、血栓溶解療法(t-PA)を使用できる可能性があります。脳梗塞の原因となった血栓を溶かして詰まった血管を再開通させ、脳に血液を再び送ることが可能となるため、脳梗塞後の後遺症の程度を小さくする事が可能です。しかし、場合によってはt-PA使用後に脳出血を起こす可能性もあるため、慎重に判断する必要があります。tPAの適応がない場合や、tPA投与にて効果が無い場合には、直ちに脳血管内治療を行い、直接血栓を回収する治療が推奨されています。治療が奏功せずに、とても大きな脳梗塞が出来てしまった場合や、脳ヘルニアの状態となってしまった場合には、救命目的の外科治療も考慮されます。また、心原性脳塞栓症の薬物治療は、抗凝固薬を用いて新たな血栓の形成を防ぎ、再発を予防することが中心となります。急性期はヘパリンという点滴薬を用い、その後はワルファリンという内服薬に切り替えることが従来の標準的な治療でした。しかしワルファリンはデメリットも多く、最近では、新規経口抗凝固薬(NOAC)と呼ばれるいくつかの薬が認可されています。

予防/治療後の注意

心原性脳塞栓症の発症予防のためには、心房細動の早期発見・早期治療が重要となります。不整脈や心房細動は高齢者に多く、70歳をこえると5~10%の人に起こるといわれています。定期健診や人間ドックなどで、不整脈や心房細動が見つかった場合には、速やかに治療を行うことが、心原性脳塞栓症の予防に繋がります。

こちらの記事の監修医師

東邦大学医療センター大橋病院

中山 晴雄

〇 診療科 :脳神経外科 講師

【学歴および職歴】
2003(平成15)年3月 東邦大学医学部卒業
5月 第97回医師国家試験合格(医籍登録番号第436448号)
5月 東邦大学医学部付属大橋病院にて研修
2005(平成17)年4月 東邦大学大学院医学研究科博士課程入学
2009(平成21)年3月 東邦大学大学院医学研究科博士課程満期退学
4月 東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科レジデント復職
横浜総合病院出向
2010(平成22)年3月 博士(医学)(東邦大学甲第400号)取得
4月 東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科シニア・レジデント
2011(平成23)年1月 日本外科感染症学会インフェクションコントロールドクター
(第SI0594号)
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医取得(J-807号)
4月 東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科復職 助教となる
8月 日本脳神経外科学会専門医取得(第7582号)
11月 日本外科感染症学会認定医(A000092号)、教育医(D000092号)取得
2013(平成25)年6月 東邦大学医学部医学科講師となる。院内感染対策室副室長となる
2015(平成27)年3月 日本結核病学会結核・抗酸菌症認定医取得(151119号)
        11月 東邦大学医療センター大橋病院 教育支援管理部副部長となる
2016(平成28)年1月 日本感染症学会専門医取得(第15111506号)
2017(平成29)年5月 日本医療安全学会高度医療安全管理者取得(H290512)
         9月 日本医真菌学会認定専門医取得(第114号)
2018(平成30)年1月 抗菌化学療法指導医(F-0487)
        11月 平成30年度プログラム責任者養成講習会修了
2019(平成31)年2月 日本脳神経外科救急学会PNLSコース修了
         4月 東邦大学医療センター大橋病院滅菌材料部長委嘱
2020(令和 2)年5月 日本医療安全学会高度医療安全推進者認定(M17051201)
2021(令和 3)年1月 日本エイズ学会認定医認定(医000381)
          3月 日本感染症学会指導医認定(第1138号)
          5月 日本脳神経外傷学会認定指導医認定(第21180号)
  2022(令和4)年1月 日本臨床微生物学会認定医認定(第2021020号)
               現在に至る

【専門分野】
脳神経外科一般
神経感染症
スポーツ頭部外傷
機能的脳神経外科

【 受賞 】
平成23年第55回日本医真菌学会最優秀論文賞   
平成23年度東邦大学額田奨学金
平成24年東邦大学創立60周年記念学術振興基金奨励金
平成24年柳瀬武司奨学基金
平成31年JA共済交通事故医療研究助成

【 学会の役職 】
日本脳神経外科学会 評議員
日本外科感染症学会 評議員
日本脳神経外傷学会 評議員・代議員・社員・機関誌編集委員会幹事・頭部外傷データバンク検討委員・スポーツ脳神経外傷検討委員会委員
日本臨床スポーツ医学会 評議員・代議員・学術検討委員脳神経外科部会委員・編集委員
私立医科大学協議会 院内感染対策部門委員
日本感染症学会 評議員
NPB医事委員会 医事委員会委員
日本医療安全学会 代議員
日本神経感染症学会 評議員
スポーツ脳神経外傷検討委員会 副委員長
日本結核・非結核性抗酸菌症学会 ガイドライン統括委員会 
結核診療ガイドライン作成システマティックレビュー委員

治療に適した診療科目

脳神経外科 神経内科 循環器科 老年科

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