最終更新日:2022年11月8日
吐き気を伴う頭痛の原因は?対処法・予防法も解説

こちらの記事の監修医師
医療法人社団 創知会 メモリークリニックお茶の水
荒木 亙

この記事では、吐き気を伴う頭痛の種類と対処法について解説します。頭痛にはさまざまな種類があり、偏頭痛のように吐き気を伴うものもあれば、緊張型頭痛のように吐き気を伴わないものもあります。また、中には命の危険につながる頭痛もあるため注意しなければなりません。吐き気を催す頭痛で悩んでいる人は参考にしてください。
偏頭痛では吐き気を伴うことが多い
頭痛と一言でいっても吐き気を伴うものとそうでないものがあります。ここでは主な頭痛の種類と具体的な症状について解説します。
偏頭痛(片頭痛)
偏頭痛とは、血管が拡張することで拍動性の痛みが発生する頭痛のことです。脳の血管が何かしらの理由によって急に拡張することで起こります。
痛みは主にこめかみ周辺から起こり、数時間から数日程度続くケースが一般的です。また、頭痛以外にも、吐き気や嘔吐、まれに下痢といった症状を伴うこともあり、光や音におい、気圧の変化などに敏感となるという特徴もあります。
偏頭痛は、頭痛が現れる前の症状として閃輝暗点が見られることも少なくありません。閃輝暗点とは、視野の中にギザギザの光の波が突然現れ、少しずつその波が四方へと広がっていき、目が見えにくくなる現象のことです。数分〜数十分程度で収まりますが、その後頭痛や吐き気などの症状が現れます。
偏頭痛には完璧主義者、神経質な人などがなりやすいとされています。これらの人たちは、性格的にストレスがたまりやすく、ストレスから解放された時に、急激に血管が拡張することがあるため、偏頭痛が起こります。
例えば、学生であればテストが終わったあと、会社員であれば仕事のない週末などに偏頭痛が発生するケースは少なくありません。また、寝不足や疲労、光や音などによる刺激も偏頭痛を引き起こすことがあります。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、筋肉が緊張することで起こる頭痛です。具体的には、頭の横にある筋肉や肩や首の筋肉の緊張が原因となります。
パソコンの前に座って長時間作業をする、無理な姿勢がずっと続くなど、筋肉の緊張状態が続くと血流が悪くなります。血流が悪化すると体内に老廃物が蓄積され、その周辺の神経を刺激するため、頭痛が起こるとされています。
偏頭痛はこめかみ周辺の痛みが特徴ですが、緊張型頭痛は、後頭部から首筋あたりを中心に痛みを感じる点が特徴です。一方で、偏頭痛とは違って、緊張型頭痛は吐き気や嘔吐などの症状はあまり見られません。また、痛みを感じるとはいっても、偏頭痛のように日常生活に大きな支障をきたすことも少ないでしょう。
ただし、痛みの期間は数時間程度で治ることもあれば、慢性化して数ヶ月続くこともあるため、注意してください。
緊張型頭痛の主な原因は身体的なストレスであるため、長時間同じ姿勢で作業をする人、パソコン作業が中心で座りっぱなしの人などはこまめにストレッチをするなどして体をリラックスさせることが大切です。
なお、中にはうつ病などが原因で緊張型頭痛が発生する人や偏頭痛と緊張型頭痛を併せ持っている人もいます。
吐き気を伴う頭痛には様々な原因がある
吐き気を伴う頭痛は、偏頭痛以外にもさまざまな種類があり、別の病気が原因となっていて命に関わるものもあります。別の病気が原因で起こる頭痛のことを二次性頭痛といいます。
過去に経験したことないような痛みを伴っている、わずかな時間で痛みが強くなった、発熱や手足のしびれを伴うといった場合、二次性頭痛の可能性が高いです。ここでは二次性頭痛の種類について解説します。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳を覆っているくも膜と呼ばれる膜の下で出血が起こった状態のことです。脳動脈瘤の破裂が原因で起こります。くも膜下出血になると、ハンマーで叩かれたような強い痛みに襲われ、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。また意識を失うこともあるので、早急な対応が必要です。
脳腫瘍
脳腫瘍は、頭蓋骨の内部に腫瘍ができた状態です。腫瘍が大きくなることで脳を圧迫するため、頭痛が引き起こされます。特に早朝〜朝にかけて痛みが発生するケースが多く、吐き気がないにもかかわらず突然嘔吐してしまうこともあります。症状が進むと、頭痛が強くなるほか失神したり、いろいろな神経症状が現れることもあります。
髄膜炎
髄膜炎は、脳と脊髄を包む髄膜が炎症を起こしている状態です。ウィルスや細菌、真菌などに感染することで発症します。激しい頭痛のほか、発熱や悪寒、嘔吐などを伴う点が特徴です。風邪やインフルエンザと似たような症状であり、間違えてしまう人もいるため注意しなければなりません。
頭痛の予防法
ここでは頭痛の予防法について解説します。頭痛はいつ起こるか予想できませんが、予防法を把握しておくことで、頭痛のリスクを回避できる可能性が高まります。ぜひ参考にしてください。
偏頭痛の予防法
頭痛の中でも偏頭痛の予防法を紹介します。特別なことではなく、今日からでもできることを取り上げているため、偏頭痛に悩んでいる人は試してみてください。
偏頭痛が発生した状況を確認する
偏頭痛がどのような時に発生したのか、その時の状況を確認し、記録しておきましょう。例えば、何月何日、どこで、何をしていた時なのか、体調はどうだったのか、といった情報を残しておきます。
記録を残すことで、人混みにいた、大きなプレゼンが終わった日だった、忙しくて睡眠不足だったなど、偏頭痛が起こった日の特徴や傾向が見えてきます。引き金となる要素がある程度把握できれば、事前に対策をすることもできるでしょう。
規則正しい生活を心がける
偏頭痛に限った話ではありませんが、健康的な日々を送るためには、規則正しい生活が欠かせません。偏頭痛の場合、寝不足や寝すぎ、疲労などが原因となって発症することもあります。
平日は睡眠時間が短く、週末や休みの日に寝溜めをしようとする人、食事をついつい抜かしてしまう人は、まず毎日6〜8時間程度の睡眠をとること、1日3食とることを心がけてください。
食品に注意する
偏頭痛には誘発食品があるため、それらを控えることが頭痛や吐き気の予防になります。具体的には、以下のような食品が偏頭痛を誘発するとされています。
- チョコレート
- チーズ
- ヨーグルト
- ハム
- ソーセージ
- かんきつ類
- ナッツ
など
上記のような食品の食べ過ぎに注意してください。また、お酒は脳の血管を拡張させるため、偏頭痛につながりやすく、中でも赤ワインは偏頭痛の誘因になるといわれています。
緊張型頭痛の予防法
ここでは、緊張型頭痛の予防法を解説します。緊張型頭痛は吐き気こそ伴いませんが、場合によっては症状が慢性化することもあります。どのような予防法があるのか参考にしてください。
同じ姿勢をとらない
緊張型頭痛は長時間同じ姿勢をとり続けて筋肉が緊張することで起こる頭痛です。そのため、同じ姿勢を取り続けないことが予防法となります。デスクワークが中心で1日中座って作業をする人でも、定期的に立ち上がってストレッチをする、作業の合間に短い散歩をするなど体を動かすようにしましょう。
以下のようなストレッチは簡単にできるため、オフィスなどでもぜひ試してみてください。
- 両肩を上げてからストンと落とす
- 首を倒す(右手を頭に乗せ、左肩の力を抜いて右側に倒す。反対方向も同じ)
- 椅子に座った状態で前屈する
ストレッチは体をリラックスさせた状態で行います。
枕の高さを変える
枕の高さによっては筋肉の緊張につながり、緊張型頭痛を引き起こす可能性があります。高すぎる枕や柔らかすぎる枕は首に負担がかかります。専門店に行けば、自分にあった枕を店員に相談しながら選べるため、自分の首に合わせた高さの枕を使用するようにしましょう。
その他の一般的な予防法
ここまで紹介してきた予防法以外にも、頭痛予防にはさまざまなものがあります。ここでは、一般的な予防法について解説します。
光に注意する
ブルーライトや強い光は頭痛を引き起こす可能性があります。特に、パソコンやスマートフォンが発するブルーライトは頭痛の大敵といっても過言ではありません。ブルーライトは、人間が目視できる光の中ではエネルギーが最も強く、網膜から脳にダイレクトに光が届くため、刺激も強くなります。
一方で、現在では日常生活にパソコンやスマートフォンが欠かせないものとなっているため、完全に使用しないのは不可能に近いでしょう。そのため、パソコン作業を行うときはブルーライトをカットするメガネを使う、蛍光灯の光が強い場合は間接照明を活用する、睡眠前にはパソコンやスマートフォンを使用しないなど使い方を工夫するようにしましょう。
匂いに注意する
いい香りの柔軟剤や芳香剤がたくさんありますが、それらの香りが頭痛を引き起こすこともあります。匂いが頭痛の誘因となる場合、できるだけ匂いのするものを使用しない、使用するにしてもこまめに喚起して匂いがこもらないようにするなどの対策を行ってください。
大きな音に注意する
音は脳を過剰に刺激するため、テレビやスピーカーから聞こえる大きな音が頭痛を誘発することもあります。音楽やテレビを楽しんではいけない、というわけではなく、頭痛を予防するためにも、できるだけ音量を抑えて楽しむようにしましょう。
偏頭痛による吐き気の対処法
ここでは偏頭痛によって吐き気を催した時の対処法について解説します。いざという時のためにも、ぜひ参考にしてください。
患部を冷やす
偏頭痛の場合、冷たいタオルなどで患部を冷やすことで、痛みが軽減される可能性があります。一方で、入浴やマッサージは、血管を拡張させ痛みが強くなる可能性があるため注意してください。
ちなみに、緊張型頭痛の場合は、マッサージや半身浴など、体を温めることが筋肉の緊張をほぐしてくれるため効果的です。同じ頭痛でも、冷やしたほうがいい場合と温めたほうがいい場合があるため間違えないようにしましょう。
安静にする
頭痛や吐き気を伴う場合、できるだけ安静にするようにしましょう。体を動かすことでさらに痛みが増すほか、光や騒音に遭遇することで痛みが強くなる可能性もあります。安静にする場合、静かで暗い場所に横になるようにしてください。
カフェインを摂取する
カフェインには、血管を収縮する効果があるため、偏頭痛の時に飲むと痛みが軽くなる可能性があります。痛みが現れた早期の段階で飲んでみてください。ただし、飲みすぎると頭痛を誘発する恐れがあるため注意してください。
薬を服用する
閃輝暗点など、偏頭痛の症状が現れた段階で早めに痛み止めを服用することで、頭痛や吐き気を抑えることができます。また、痛み止めと合わせて吐き気止めの薬を服用することもできます。一方で痛みが本格的になってからの服用は、薬の作用が薄れてしまうため注意してください。すぐに薬が飲めるように、日頃から薬を持ち歩くようにしておくといいでしょう。
ツボを押す
頭痛に効くとされるツボを押すことも対策となります。具体的には、以下のようなツボが挙げられます。ぜひ試してみてください。
- 頷厭(がんえん):耳の少し上からこめかみ周辺にかけてあるツボ
- 百会(ひゃくえ):頭頂部中央のくぼんだところにあるツボ
- 風池(ふうち):耳の後ろの尖った骨と後頭部のくぼみの間にあるツボ
- 天柱(てんちゅう):後頭部の髪の生え際にあるツボ
- 肩井(けんせい):首の後ろ側の付け根と肩先の間にあるツボ
ツボを押す際は、ゆっくりと10秒程度息を吐きながら押してください。
受診の目安
頭痛を繰り返し起こしている、目の奥が痛む、首を動かすと痛むといった場合は一度病院で診察を受けることをおすすめします。頭痛の種類によっては命の危険を伴うものもあるため、精密検査を受けて脳や体のその他の部分に病気が隠れていないか調べてもらいましょう。
大きな病気がない場合でも、病院を受診することで痛み止めの処方や治療など、適切な処置を受けられるため、症状が改善される可能性があります。人によっては頭痛と何年も付き合わなければならないケースもあるため、相談できる医師を見つけておくといいしょう。
診療科は、脳神経内科や、脳神経外科、内科などを受診してください。また、病院によっては頭痛外来もあります。
受診のポイント
受診する際は、頭痛の症状をできるだけ詳しく伝えることがポイントとなります。そのため、先ほども説明しましたが、頭痛がどのような時に起こるのか、普段から頭痛発生時の状況を記録に残しておきましょう。
いつ頭痛が起こったのか、どこが痛いのか、頭痛の前に何か症状があったか、頻度はどのくらいかなどできるだけ多くの情報を伝えられるようにしておけば、医師も治療がしやすくなります。
まとめ
今回は、吐き気を催す頭痛の種類や対処法などについて解説しました。頭痛にはさまざまな種類がありますが、代表的なものが偏頭痛と緊張型頭痛です。中でも偏頭痛は強い頭痛と吐き気を伴います。
そのほかにも、くも膜下出血や脳腫瘍、髄膜炎など吐き気を伴い、さらに命に関わる可能性のある頭痛もあります。頭痛の症状が続くようであれば、一度病院を受診することをおすすめします。
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こちらの記事の監修医師
医療法人社団 創知会 メモリークリニックお茶の水
荒木 亙
〇診療科 :精神科
《経歴》
1985年 京都大学医学部卒業、1992年 同大学院修了、1995年 米国留学。1998年より、国立精神・神経医療研究センター神経研究所 室長として、主に認知症研究に従事。2018年より、医療法人社団創知会に勤務し、物忘れ外来を担当している。 専門分野:神経内科学・認知症、資格:日本内科学会認定内科医、日本神経学会専門医
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