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最終更新日:2022年5月29日

迷走神経反射とは?原因や症状、注射との関係もわかりやすく解説

こちらの記事の監修医師
山中脳神経外科・リハビリクリニック
山中 一功

(画像=stock adobe.com)

迷走神経は、損傷されたり刺激される場所によって、きわめて軽微であってもショック状態に陥ることがあり、その場所を dangerous 領域と呼ぶこともあります。ここでは、迷走神経反射について、原因や症状を詳しく解説し、原因のひとつであるとされる注射との関係についても紹介します。

迷走神経とは、脳神経の一つで、その大部分は副交感性の線維のため、副交感神経の代表的な神経で、延髄から出て頭部や頸部、胸部,腹部 (骨盤を除く) のすべての内臓に分布して、感覚、運動、分泌を支配しています。

通常、迷走神経反射は、自律神経のバランスが崩れることで、失神やめまいなどを生じるもので、この現象だけでも危険ですが、頸部や腹腔、外陰部などの外傷では、ショック状態に陥る迷走神経ショック(vagal shock)とも呼ばれる反射的な心拍低下や末梢血管拡張による循環不全に至ることがあり、注意が必要です。

迷走神経反射とは

迷走神経反射とは、自律神経反射の一つで、身体のさまざまな調節機構の制御に重要な役割を果たしています。こうした反射は生命を維持しようとする正常な生理的防衛反応ですが、問題は、この反射が、さまざまな原因により過剰な反応を起こした場合におこる失神やめまいなどを来してしまう反射のことです。

心血管系および中枢神経系に原因はなく他の原因疾患も明らかでない失神発作の総称「神経調節性失神(neurally mediated syncope : NMS)」の一つとして「血管迷走神経性失神:(vasovagal syncope: VVS)」と呼ばれることもあります。

迷走神経反射の原因

迷走神経反射の原因とは、どのようなことが考えられるのでしょうか。

迷走神経反射が起こるメカニズム

私たちの全身の機能を意思とは無関係に調整しているのが、自律神経です。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、交感神経は活動・緊張・ストレスを感じているとき(主に昼 間の活動中)に働き 副交感神経は休息・修復・リラックスしているとき(主に夜の睡眠中)に働きます。 そして、この神経を介して血圧や脈拍,発汗、胃腸の運動などをコントロールしています。
しかし、何らかの原因によって迷走神経反射を起こすと、一時的に血圧の低下や心拍数の低下が起こり、脳への血流が減少することでめまいや失神を引き起こすのです。

迷走神経反射の誘因となるもの

迷走神経反射は、強い痛み疲労睡眠不足排泄などによる刺激、精神的、肉体的に強いストレスなどが誘因となり、自律神経のバランスを崩すことで起こります。そのため過度な緊張は、その原因のひとつだとされています。また、長時間起立している時にも迷走神経反射はよく起こります。通常、立った姿勢の時、脳に血液を届けるには血圧を維持する必要があるため、交感神経の反射により血管を収縮させますが、長時間立ちっぱなしの状態が続くストレスにより迷走神経が過剰に反応することで血管拡張がおこり血圧が下がるため脳血流低下を来し、失神しやすい状態となってしまいます。

他に、排便、排尿による刺激(排尿失神)、脱水、高血圧の薬として処方される降圧薬が誘因になることもあります。薬によって失神が起こった場合は、ただちにかかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。

注射・ワクチン接種で起こることも

採血やワクチン接種などの時、注射が苦手な人は、注射をする前の不安感や恐怖、針を刺すことによる痛みなどの刺激が大きなストレスとなり、迷走神経反射が起こりやすくなります。そのため、反射の既往歴や反射が起こりやすい人には、横になったまま注射をすることがあります。

また、注射をしたあとに「横になって休んでくださいね」と言われることがありますが、これは迷走神経反射を予防するためでもあります。

迷走神経反射の症状・前兆

迷走神経反射には、前触れとなる症状があります。まずは、迷走神経反射の前兆からご紹介しましょう。

迷走神経反射の前兆

迷走神経反射による失神が起こる前には、多くの場合、前兆となる何らかの症状があります。よくあるのが、気分が悪くなったり吐き気がしたりするというものです。また、血圧が下がるために、急に眠くなったりあくびが出たりすることもあります。
その他、顔面蒼白頭痛発汗目の前が暗くなる視野が狭くなるなどの症状も前兆としてよく現れます。

迷走神経反射の症状

迷走神経反射の代表的な症状は、失神です。軽いものでは、頭痛めまい吐き気など、前兆と同じような症状があります。排尿や排便の直後に失神やふらつきを起こすこともあります。
迷走神経反射の症状は、一般的には長くても数分で回復することがほとんどで、横になると脳に血流が届きやすくなるため、比較的早く回復します。

突然の失神は迷走神経反射?

失神は、迷走神経反射の代表的な症状ですが、失神したからといって全てが迷走神経反射だとは限りません。突然、失神した場合には、重大な病気が隠されている可能性もあるので、注意が必要です。

失神を引き起こす原因はさまざま

失神は、重大な病気の症状である可能性があります。脳が原因で起こる失神には、くも膜下出血てんかんの発作などがあります。
乳幼児では、高熱が出たときに熱性けいれんとともに失神を起こすことがあります。こういった、脳が原因で起こる失神は、迷走神経反射のような前触れはほとんどなく、本当に突然起こります。
心臓の病気が原因で失神が起こることもあります。急性心筋梗塞不整脈心臓弁膜症などによって心臓から血流がスムーズに送り出されなくなる心不全によって、脳にも血液が届きにくくなり、意識を失ったりめまいがしたりすることがあるのです。

迷走神経反射かを判断する検査

失神の原因を調べるものとしてよく行われているのが、ティルト試験(ヘッドアップティルト試験)です。この検査は、自律神経の調節異常が起こりやすいかどうかを調べるもので、検査台の上に横になり、検査台を起こしたり倒したりを繰り返しながら、血圧や脈拍をモニターし判定します。判定は、悪心嘔吐眼前暗黒感めまいなどの失神の前駆症状や失神を伴う血圧低下と徐脈を認めた場合に陽性とします。
このティルト試験は、失神の原因不明が不明な場合や治療効果の判定にも用いられる基本的なスクリーニング検査です。

迷走神経反射の対応・治療

迷走神経反射を起こした時は、どのように対応すればいいのでしょうか。また、迷走神経反射の症状は治療によって治るものなのでしょうか。ここでは、迷走神経反射に対する対応や治療法についてご紹介します。

迷走神経反射の前兆が見られたときの対応

迷走神経反射の症状は、脳への血流が減少したときに現れます。そのため、前兆となるめまい、悪心、眼前暗黒感などの失神前駆症状が見られた時には直ぐに横になって安静にすることが効果的です。こうすることで脳に血流がいきやすくなり、回復を早めることができます。

迷走神経反射は治療できる?

迷走神経反射の治療として、まず、失神発作の頻度、重症度などに応じ、本人にこの疾患の病態を理解していただき、生活指導や増悪因子(脱水,長時間の立位,アルコール多飲など)をなるべく避けるなど、以前に迷走神経反射を起こした状況を避けるようにすることが大切です。過度なストレスを溜めないとか、脱水予防にこまめに水を飲むなど、迷走神経反射を起こした状況と同じ状況をつくらないことが有効な予防策となります。
次いで、起立時に血圧低下の原因となりうる硝酸薬、利尿薬、α遮断薬、Ca 拮抗薬など、誘因となる薬剤の中止を検討することも必要です。ただし、独断で中止することは危険なので、かかりつけの医師に必ず相談してからにしましょう。

次に非薬物治療として、迷走神経反射の人には、「起立調節訓練法」が行われることがあります。これは、自宅等の壁を利用して自分で起立訓練を行う訓練法で、おしりと背中と頭を壁にもたれるようにしてつけ、両足は壁の20センチ程度前に置きます。この姿勢を30分キープすることを毎日 1 ~ 2 回繰り返すことにより起立持続時間は徐々に延長し、 2 ~ 3 週間で当初は困難であった 30 分間の立位保持が可能となり、これをさらに継続することで失神発作の再発が長期にわたって予防されるとされています。

横になった時には、足を頭より高くして安静にしたり、弾性ストッキングによる下肢の血液貯留を抑制することや,高 Na食摂取により循環血液量を増加させることが有効であるとの報告もあります。
最後に生活指導および増悪因子を除去した後にも頻回の 発作を起こす症例や,外傷の危険が高い高齢者などには薬物療法もあります。

病気・体調不良が疑われたら即受診を

迷走神経反射には、前触れとなる症状があることがほとんどなので、それに感づいたらすぐに座ったり横になったりして安静にしましょう。吐き気やめまいなどがあるのに我慢して、突然転倒することによる、二次的な外傷や事故により、さらにひどい症状を引き起こす可能性があります。

突然、失神を引き起こす原因は、迷走神経反射だけとは限りません。脳や心臓の重大疾患の症状である可能性があります。一方、器質的な異常のない迷走神経反射による失神の生命予後は良好と考えられています。したがって、まずは「症状が軽いから大丈夫」と高をくくらず、少しの体調不良であっても、すぐに病院を受診することで、精神的ストレスが減少し、さらに失神を回避することにつながると考えられますので、積極的に医師の診察を受けることをおすすめします。

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こちらの記事の監修医師

山中脳神経外科・リハビリクリニック

山中 一功

《 経歴 》  
1990年 大阪大学医学部脳神経外科教室 入局
1990年 大阪大学医学部付属病院、若草第一病院 研修医
1991年  国立大阪病院脳神経外科 研修医、レジデント
1995年 大野記念病院、吹田市民病院 脳神経外科 医員
1997年 りんくう総合医療センター市立泉佐野病院 脳神経外科 副医長
2000年 河内総合病院 脳神経外科 副部長
2002年 財団法人 大阪脳神経外科病院 第二診療部長
2004年 独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 脳神経外科 医長
2015年 社会医療法人生長会 府中病院 脳外科・脳卒中センター 長 兼 脳神経外科 部長
2017年 山中脳神経外科・リハビリクリニックを開院

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