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最終更新日:2022年7月16日

日々の脚の痛みとおさらば…実はいま増えている「人工股関節」のメリット・デメリット【専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
塗山 正宏


※画像はイメージです/PIXTA

歳を重ねるにつれて増えてくる、股関節の違和感や痛み。そんな「変形性股関節症」の治療方法の1つに、「人工股関節置換術」というものがあります。「人工」と聞くとネガティブなイメージを持ってしまいがちですが、世田谷人工関節・脊椎クリニックの塗山正宏先生は「多くのメリットがあり、選択する人が増えている」といいます。今回は、「人工股関節置換術」の詳しい内容やメリット・デメリットについてみていきます。

スムーズな関節の動きを取り戻す「人工股関節置換術」

変形性股関節症が進行すると、なにもしていなくても痛みが出たり、「立つ」「歩く」「上る」など日常生活のさまざまなシーンで支障が起きます。そんな変形性股関節症の治療として、いま大きな注目を集めているのが「人工股関節置換術」。文字通り、傷ついた股関節を人工のものに置き換える治療法です。

胴体と下肢のつなぎ目として重要な役割を果たす「股関節」

そもそも股関節とは、太ももの付け根にある大きな関節のことをいいます。骨や軟骨などさまざまな組織で構成されており、胴体と下肢のつなぎ目として、複雑な脚の動きを可能にするという大きな役割を果たしています。

しかし、加齢などが原因で股関節を形成している軟骨や骨が傷ついたりすり減ったりすることで、股関節痛や機能障害が起こります。これが「変形性股関節症」です。

この傷つきすり減った股関節を体から取り出し、人工のものに置き換える治療法が「人工股関節置換術」です。現在、国内でも手術件数が増加しています。

「人工関節」…4つの部位で股関節の動きを再現

人工関節は主に4つの部位に分けられます。その4つとは、大腿骨に挿入する「ステム」、骨盤のくぼみ(寛骨臼)にはめ込む「カップ」、カップの内側にあり軟骨の役割をする「ライナー」、骨盤側の受け皿にすっぽりはまる「骨頭」です。

[図表1]大腿骨に挿入する「ステム」

「人工股関節置換術」の具体的な流れ

手術では、まず骨の損傷部分を取り除き、それから人工股関節をはめ込みます。

[図表2]「人工股関節置換術」の流れ

手術時間は症例にもよりますが、一般的には90〜120分が目安です。全身麻酔下で行われ、場合によっては硬膜外麻酔を追加して、術後の痛みを緩和することもあります。

人工股関節置換術は現在、多くの患者が選択している治療法です。人工股関節や術式も時代とともに進化し、非常に安全性が高く、患者の満足度が高い治療といわれています。

選ばれる「人工股関節置換術」…5つのメリット

変形性股関節症の手術には、人工股関節置換術のほか、「骨盤骨切り術」といって、骨の一部を切り取り、関節の構造を変化させることで、症状の改善を目指すものもあります。

しかし現在では、「まだ20〜30代だから、自分の股関節を温存したい」という人を除いては、人工股関節置換術を選択するケースが多くなっています。なぜなら、人工股関節置換術にはさまざまなメリットがあるからです。

1.股関節の痛みを緩和することができる

最大のメリットは股関節の痛みを取り除くことができるということです。これまで日常生活を妨げてきた痛みが緩和されることで、不自由なく生活を送れるようになります。

2.股関節の可動域が広がる

骨の損傷部位を取り除くことで、股関節の可動域が最適化されます。ただし、術後の関節可動域は、手術内容やリハビリの結果によって変わってきます。そのため術後は医師の指示通りにリハビリを行い、退院後も通院でのリハビリを継続することが推奨されます。

3. リハビリ期間が短い

最小侵襲手術である人工股関節置換術の場合、手術におけるダメージが少ないため、術後の回復が早いのもメリットの1つです。術後は早ければ手術した当日から歩行訓練を始めることができ、社会復帰がスムーズになります。

[図表3]術後のリハビリ

4.脚の長さが揃う

変形性股関節症になると軟骨のすり減りや関節の歪みから脚の長さが短くなることがあります。その点、人工股関節に置き換えることで最大3cm程度脚を長くすることが可能です。また、両脚の長さが揃うことで歩行のバランスが改善し、腰痛や膝関節痛の予防に繋がります。

5.活動範囲が広がる

これまで脚が痛いといってあきらめていた外出やスポーツなどができるようになり、生活の質が向上します。

一方「合併症のリスク」などデメリットも

これだけたくさんのメリットがある人工股関節置換術ですが、その一方デメリットもあります。

1.合併症のリスクがある

通常、手術には合併症のリスクがつきものであり、人工股関節置換術も例外ではありません。代表的な合併症を挙げてみます。

■感染症
股関節に細菌が侵入することで炎症が発生します。人工関節手術での感染症は難治性のものが多く、場合によっては再手術が必要になることもあります。発生の確率は1%程度です。

■脱臼
人工関節がまだ安定していない状況で激しい運動などを行うと、脱臼するリスクがあります。術後3ヵ月以内が発生しやすいので、その時期はじっくりリハビリに取り組み、無理をしないことが大切です。発生の確率は1%程度です。

■深部静脈血栓症、肺血栓症
手術の際出血が起きると、人間の体は自己防御反応として血液が固まりやすい状態になります。また、手術中や手術後は下肢をそれほど動かすことができないので、下肢の血流が滞ってしまい、下肢の静脈内に血液の塊(血栓)ができることがあります。

これが血流に乗って肺まで到達すると、肺でのガス交換が正常に行われなくなり、死に至ることもあります。発生の確率は数%程度です。

2.長期的に経過観察する必要がある

近年、技術革新が進んで人工股関節の寿命が伸びたとはいえ、場合によっては関節の緩みや破損が生じることもあり、そうなると、再手術が必要になってきます。そのため、人工股関節が正常に機能しているか、破損などを起こしていないかなど、長期間にわたって、定期的に検診を受ける必要があります。

糖尿病の人、心肺機能が低下している人は手術適応外になることも

糖尿病があると全身の免疫機能が低下しているため、感染症のリスクが高まります。そのため一般的には、血糖値の目安となる「HbA1c」の数値が7.5以下の人が手術の対象になります。それを超えている場合は、まず糖尿病の治療に集中して血糖値を下げることが優先されます。

また、心肺機能に重度の障害がある人は、全身麻酔に耐えるのが難しくなるため、手術適応外になることがあります。

手術後に気をつけたい「骨粗鬆症」と「転倒」

人工股関節置換術を受けたあと、日常生活で気をつけたいのが「骨粗鬆症」と「転倒」です。

骨粗鬆症になると、人工股関節を支えている骨がもろくなり、少しの衝撃でも骨折することがあります。そうなると、手術を再度やらなければならないこともあります。

転倒も骨折のリスクを高めるため、気をつけたいものです。普段から下肢の筋肉が衰えないように、適度な運動で鍛えておくことも大切です。

また、手術後にいきなり体重が増えるのも危険です。手術自体は、体重が重いからと受けられないことはありませんが、肥満は術後、人工股関節に多大な負担をかける原因になります。特にリハビリ期間中は、思うように体を動かせないストレスから過食に走る人も少なくありません。そうしたことがないよう、適正体重の維持を心がけましょう。

まとめ…治療決断の際は慎重な「医師選び」を

「人工股関節置換術」といっても実はさまざまな種類の術式があり、傷跡が小さくてリハビリ期間が短いものもあれば、傷跡が20cmくらいと大きく、入院期間が比較的長めなものもあります。

しかし上記のように、人工股関節置換術には多くのメリットがあります。変形性股関節症に悩んでいる人は、ぜひ視野に入れてみてはいかがでしょうか。

ただしその際、どの病院で治療をするかという「医師選び」も重要なポイントです。

こちらの記事の監修医師

世田谷人工関節・脊椎クリニック

塗山 正宏

世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会運動器リハビリテーション専門医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター

2005年北里大学医学部卒業。北里大学病院、北里大学東病院、同救急救命センターを経て、北里大学メディカルセンターにて人工関節置換術の研鑽を積む。

現在は世田谷人工関節・脊椎クリニックにて股関節、膝関節の人工関節手術を専門とする。