最終更新日:2022年11月2日
「子どもがインフルエンザに!」…タミフル投与は必要か【専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
京都きづ川病院
米田 真紀子

この冬はコロナ禍にあって初めて、インフルエンザの流行の兆しがあると専門家が懸念を示しています。また、1人目のお子さんが3歳以下の場合には、そもそも子どもがインフルエンザに罹った経験がないのではないでしょうか。この冬の流行に向けて、今一度インフルエンザとはなにかをおさらいしておきましょう。京都きづ川病院/きづ川クリニックの小児科医、米田真紀子先生が解説します。
インフルエンザのキホン
一般にインフルエンザとは、いわゆるインフルエンザウイルスのことです。ヒブ(インフルエンザ桿菌b)との区別が分かりにくいですが、ヒブはウイルスではなく細菌の一種です。ここ以降では、インフルエンザウイルス感染症のことを、簡略的にインフルエンザと記載します。
インフルエンザウイルスは主にA型からD型までありますが、ヒトに感染して冬期に大流行するのは、A型かB型です。
特にA型インフルエンザウイルスはその表面抗原の構造からヘマグルチニンのHとノイラミニダーゼのNの組み合わせで、100種類以上に分けられます。たとえば、ヘマグルチニンの1型とノイラミニダーゼの1型の組み合わせは、A(H1N1)と表現されます。現在はA型であればA(H1N1)型、あるいはA(H3N2)型の2種、そしてB型はビクトリア株あるいは山形株の2系統のいずれかが流行しやすいと考えられています。
例年、各国の流行状況から、流行しそうな型を予測し、A型B型それぞれ2種類ずつ計4種類を混ぜ合わせてワクチンを精製しますが、インフルエンザウイルスは型の中でも変異を重ねていくという性質があるため、変異の程度が大きい場合には、ワクチンの有効率も下がっていってしまいます。
インフルエンザの症状…子どもの場合「熱せん妄」が起きることも
インフルエンザの症状は、発熱、咳、鼻水が主で、いわゆる感冒(風邪)と大きくは変わりませんが、特徴的なのは、高熱が出やすいこと、咳や鼻水などの症状が、発熱に続いて起こる傾向があることです。
また、高熱により、節々の痛みや頭痛なども強くなりやすく、通常感冒よりも症状がきつい場合が多くあります。ただし、これはあくまで傾向であって、高熱だからとか節々が痛いから、ということだけでインフルエンザかどうかを判定することはできません。
また、熱が出ないけれど倦怠感が強くて、検査をしたらインフルエンザが陽性に出た、というような症例もいくらでもあるので、症状や所見から判断することは難しいです。
一方、新型コロナウイルス感染症の症状も、特徴としてはインフルエンザとほとんど同じで、高熱からの発症、その後の咳・鼻水症状、数日の経過で自然軽快します。以前は肺炎を起こしやすいといわれていましたが、オミクロン株以降は上気道炎としての傾向が強くなりました。このことからわかるように、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症を症状や経過で見分けるのはほぼ不可能といえます。
インフルエンザのように急に高熱を出す疾患は、子どもの場合「熱せん妄」という状態を引き起こすことも知られています。高熱でうなされて突然わけのわからないことを言いだしたり、目に見えるはずのないものが見えるといったり、かと思えばいきなり笑いだしたりなど、普段と違う様子になることがあります。
また、「肺炎」を起こすこともあり、しばしば入院するきっかけになります。重篤な合併症としては、「脳炎・脳症」があり、体の免疫反応が過剰に働くことで、脳に損傷を与えてしまう病態で、命に関わることがあります。こうした症状もすべて新型コロナウイルス感染症にも共通してみられる症状です。
実は…インフルはハイリスクでなければ薬不要
インフルエンザの治療薬は、みなさんよくご存じのタミフルを筆頭とする、ノイラミニダーゼ阻害薬といわれる種類のお薬です。
ノイラミニダーゼは前述したように、インフルエンザウイルスの表面に存在する抗原のひとつで、ウイルスがヒトの細胞内で増殖して、細胞外に出ていくことに関わっている物質です。
これをブロックすることによって、インフルエンザウイルスは細胞内で増えても体中に広がっていくことができなくなります。ただし、ウイルスが十分に体中に増えてしまってからはあまり効果がないので、発症後48時間以内の投与が適切とされています。
かつては、タミフルの投与により、特に10代の患者さんで熱せん妄のような異常行動が見られる可能性が指摘されていましたが、現在、関連性は否定され、処方制限も撤廃されています。
その他、リレンザ・イナビルなどの吸入薬、1回のみの投与で有効なゾフルーザなど多種類が適応になっていますが、大切なのは、これらのお薬を投与しても、効果はある程度限定的です。
たとえばタミフルも、散薬はとても苦く、吐き気の副作用もあり、子どもがしんどいときに飲ませにくいお薬ですが、せいぜい20時間くらい有熱期間が短くなるくらいの効果しかありません。他のお薬もだいたい似たようなものです。
「お薬投与後、すぐ熱が下がった!」という経験がある人は、恐らくお薬がなくても同様によくなっていたでしょう。発症後48時間というしばりがあるために焦ってしまいがちですが、基本的にはハイリスクの方ではなければお薬は不要で、自然に治る病気であることを再認識してほしいです。
もちろん、数時間でも熱が早く下がればいい、と思われる方もたくさんおられると思いますが、特に学童期は最低でも5日間は登校/登園停止になるし、それほどのメリットは感じられないかな、というのが個人の感想です。
それよりも、いざというときに焦らないでいいように、ワクチンの接種や解熱薬の準備など、いまからできることをしておきましょう。
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こちらの記事の監修医師
京都きづ川病院
米田 真紀子
日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
1981年生まれ。平成19年滋賀医科大学医学部卒。同年4月より滋賀医科大学付属病院にて初期研修の後、同大学小児科学教室入局。平成23年より済生会滋賀県病院勤務の後、平成27年より京都きづ川病院勤務。
その間、3人の子供に恵まれ、育休・産休を取得しつつ、現在はその経験を生かして、患者とその家族の心に寄り添う診療を心がけている。
一般診療から小児救急、新生児領域まで幅広い経験を有する。
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8:30〜11:4517:00〜19:30土曜AMのみ診察はAM9:00〜、PM17:30〜開始夜診は小児科のみ、科により異なる臨時休診あり京都きづ川病院の一部外来診療を担当
※新型コロナウィルス感染拡大により、診療時間・休診日等が表示と異なる場合がございます。ご了承ください。