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最終更新日:2022年5月16日

子どものミネラル不足、その意外な要因とは?

こちらの記事の監修医師
オーシャンキッズクリニック
日比 将人 先生

現代人は、ミネラル不足。そんな言葉をどこかで聞いたことはありませんか?

飽食の時代になり、ミネラル不足は腎臓や腸の病気を抱える一部の方だけの問題と考えられていました。ところが、最近では健康な子どもにもミネラル不足が起こることがあります。摂取カロリーが足りているにもかかわらずそのような状態を、最近では「新型栄養失調」ともいいます。

飽食の時代なのに、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。その原因と対策についてお話します。

必須ミネラルとは?

私たちの体は、酸素、炭素、水素、窒素という4つの主要元素で全体の96%が成り立っています。

残りの4%を構成するものが、ミネラル(無機質)です。私たちの健康維持に欠かせない重要なミネラルを必須ミネラルといいます。必須ミネラルとして16種類が知られており、1日の必要摂取量が100mg以上のものを主要ミネラルといい、100mg未満のものは、微量ミネラルといいます。

主要ミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、硫黄の7種類が知られています。微量ミネラルは、9種類あり、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、モリブデン、コバルト、クロムで、生体のたった0.02%の含有量です。それぞれが、単独または相互作用によって大切な役割を有し、多すぎても少なすぎてもいけません。

必須ミネラルの欠乏症とは?

最も有名なものは鉄の欠乏による貧血です。その歴史は古く、今から2400年以上前のヒポクラテス全集には貧血の治療として鉄を摂取することが記載されています。実際には、鉄の剣をワインに浸して飲んでいたようです。現代でも、鉄鍋で調理するとが貧血にいいと言われますよね。

その次に有名になったのは、ヨウ素欠乏による甲状腺腫です。ヨウ素不足になると、甲状腺ホルモンが作れなくなりますから、甲状腺に下垂体からの甲状腺ホルモン増産命令がくるために起こるものです。

コロナ禍で、免疫力低下や味覚障害の原因として話題になった亜鉛欠乏症の存在は、1960年代になってから明らかになりました。赤ちゃんの難治性のおむつかぶれの原因が、亜鉛欠乏によることもあります。

セレン欠乏症は、心筋障害から心不全に至り、死亡した例も報告されています1)。私が小児外科の研修医の頃、短腸症候群と言って、腸が短いために口から食物を摂取し消化吸収できない病気の子どもを担当したことがあります。その子たちは、高カロリー輸液だけで生きていく必要がありましたが、その当時からセレン欠乏による心筋障害が問題になっていました。

それが明らかになったのは1980年代ですが、その診療指針ができたのは、ようやく2015年になってからと、比較的最近の話です。このように、ミネラルにはそれぞれの役割と欠乏症が存在しますが、今まであまり話題になりませんでした。戦後から食料事情が好転し、現代人が栄養不足になることはないと考えられていたからでしょうか。

なぜ健康な子どもにも必須ミネラルの欠乏がおこるのか?

小児で最も一般的なミネラル不足は、鉄欠乏です。母乳に含まれる鉄は少ないため、離乳食の開始や進みが悪い母乳栄養児に起こりやすくなります。

先ほどの亜鉛欠乏によるおむつかぶれは何故おこるのでしょうか? 多くは、母乳に含まれる亜鉛不足です。厚生労働省は、「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 」の中で、妊娠中の体重増加が不足すると、早産のリスクや赤ちゃんが在胎週数に対して小さく産まれるリスクが高まることを報告しています2)

近年のダイエットブームもあり、やせることを求める女性が増えたことで、妊産婦の栄養不足つまりミネラル不足が増える要因の一つと指摘されています。しかし、離乳が完了し、しっかりと食事が取れるようになってからもミネラル不足は起こりえます。

最も重要な点は、必須ミネラルは体内でつくられないため、食事からしか摂取できないという点です。つまり、何をどのくらい食べているかが重要なのです。野菜嫌いの子どもが多いことや、海のミネラル豊富な魚介類の摂取不足が考えられます。

これらは、当院に通院中の便秘の子どもにはほぼ共通する特徴です。玄米より精白米、黒砂糖より上白糖といった精製食品が好まれることから、素材本来の持つミネラルを摂取しにくい状況もあるかもしれません。現代では摂取総カロリー不足になることは少ないですが、逆にたくさん食べるほどミネラル不足に陥る可能性のある食品があります。それが、食品添加物が多く含まれる加工食品です。

食品添加物によって起こる可能性があるミネラル不足

食品添加物とは、食品衛生法において「食品の製造過程で、または食品の加工や保存の目的で食品に添加、混和などの方法によって使用するもの」と定義されています。

食品表示の原材料名にある、/(スラッシュ)よりも右の部分が食品添加物で、加工食品に多く含まれます。現代人の食生活は約60%以上が加工食品からなると言われているため3)、当然食品添加物の摂取も増えていると考えられます。

食品添加物の中には、リン酸塩のようにキレート作用をもつものがあるため、加工食品を中心とした食事を続けると、体内のミネラルバランスに影響する可能性があります。キレート作用とは、ミネラルと結合し、そのミネラルの働きを封じるものです。

過去100年で野菜や果物に含まれるミネラルはどう変化したか?

そうなると、やはりお母さんはもちろんこと、子どもには加工食品ばかりではなく、ミネラル豊富な食品、特に新鮮な野菜をたくさん食べていただきたいですよね。中には、うちの子は野菜大好きだから大丈夫と思われる親御さんもいると思います。ところが、そう簡単にはいかないようです。

上のグラフは、過去100年間にキャベツ、レタス、トマト、ホウレンソウに含まれるミネラル(カルシウム、マグネシウム、鉄)の平均含有量を示したものです。ここ100年の間に、80-90%のミネラルが野菜そのものから失われているのがわかります3)

つまり、野菜そのものの問題よりは、土壌汚染が進んでいることが問題になっているのです。環境省は土壌汚染の要因として農薬や化学肥料をあげています4)。上記は、英国と米国におけるデータですが、わが国を始め全世界で同様の現象がおきていることが予測されます。

今後の対策とは?

先ほども述べましたが、ミネラルは体内でつくられないという重要な事実を思い出してください。食事の大切さが改めて、理解いただけると思います。生まれてくるお子さんのために、妊娠中の女性も気をつける必要があります。

野菜そのものの栄養価が低下していますので、偏った食事は避け、多種多様なものを摂取し、肉だけでなく魚介類や非精製食品も意識して摂取した方がよいと思います。忙しい大人の方は、サプリメントによるミネラル補充も有効な手段の一つですが、子ども用のサプリメントはあまりありません。

従って、特に妊産婦さんや子どもの摂取する食べ物については、なるべく加工品ではないもの、農薬や化学肥料を使わない旬の有機野菜を選択し、水についてはミネラル豊富な自然のものも取り入れることが、子ども達そして地球の土壌の未来のためにも大切になってくるのではないでしょうか。

参考文献・資料
1) 児玉浩子 他:日本臨床栄養学会雑誌, 40, 239-83, 2018
2) JL Workinge, et al:Nutrients, 10,1202, 2018
3)「健やか 親子21」推進検討会:妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 解説要領 令和3年3月 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000776926.pdf
4) 環境経済基礎情報:土壌汚染  環境省http://www.env.go.jp/policy/keizai_portal/A_basic/a17.html

 

こちらの記事の監修医師

オーシャンキッズクリニック

日比 将人 先生

こどものお腹の病気のスペシャリスト。特に便秘外来には、県外からも多数の患者が訪れる。
「こども、未来、つなぐ。」の理念のもと、こども達の未来を見据えた診療や活動を行っており、
最近ではアンチエイジングの知見も取り入れた予防医学にも力を入れている。
 
略歴
1997年 富山医科薬科大学(現 富山大学)医学部卒
1997年 京都府立医科大学小児疾患研究施設
2005年 京都府立医科大学 医学博士
2008年 藤田保健衛生大学(現 藤田医科大学)小児外科講師
2014年 オーシャンキッズクリニック院長