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最終更新日:2022年6月21日

子供は特に要注意…昨今の「アウトドアブーム」に潜むキケンな病【小児科医が解説】

こちらの記事の監修医師
医療法人 啓信会きづ川クリニック
米田 真紀子

※画像はイメージです/PIXTA

夏場は、レジャーシーズンに加え、昨今のアウトドアブームとも相まって、食中毒が増える季節でもあります。この時季に気をつけたいのが、「腸管出血性大腸菌」による食中毒です。免疫力の弱い子供への感染は特に注意しなければならないと、小児科医の米田真紀子先生はいいます。そこで今回は、「腸管出血性大腸菌」による食中毒の感染経路や症状、予防法についてご紹介します。

腸管出血性大腸菌とは?

大腸菌は名前の通り、人や動物の大腸に生息する細菌の一種で、非常に多くの種類があります。一般的には無害ですが、そのなかで病原性を持つものは約170種類ほど見つかっています。腸管出血性大腸菌は、病原性大腸菌の一種で、ベロ毒素という腸管の出血をもたらす毒素を産生します。一番有名で頻度が多いのはO-157と呼ばれる遺伝子型の大腸菌ですが、それ以外にも、O-26、O-111など数種類が見つかっています。

腸管出血性大腸菌に感染すると胃腸炎症状が出ますが、大腸菌から出るベロ毒素によって全身の症状が出てしまった状態を、溶血性尿毒症症候群(HUS)と言います。

腸管出血性大腸菌は感染症法でコレラや赤痢とともに3類感染症に分類されており、診断すれば届け出が必要です。日本ではここ10年では年間200人から700人の人が腸管出血性大腸菌による食中毒として報告されていて、1年のなかで最も報告数が多いのが7月、8月です。

腸管出血性大腸菌の感染経路

一般的に大腸菌は哺乳類の大腸に生息していますが、家畜を食肉として加工する際に、肉が腸管内の大腸菌に汚染されることがあります。また、汚染された肉から、手や調理器具によって他の食物に大腸菌が伝播することもあります。特にO-157は大腸菌のなかでも感染力が強く、たった50個から100個の大腸菌が体に入っただけでも感染してしまいます。

食中毒報告が多いものとしては、生食するユッケやレバ刺しはもちろん、焼き肉やバーベキュー、そして肉だけでなくサラダやフルーツ、お菓子やジュースなどから検出された事例もあります。また、HUSに関しては、免疫力が弱い子供や高齢者で起こりやすいことが知られています。  

また、食中毒以外でも、感染症として人から人へ感染することもあります。感染者の唾液や便などの排泄物に大腸菌が含まれており、これが他の人の口に入ることで経口感染を起こします。感染症としての腸管出血性大腸菌の患者数を合わせると、日本で年間2000人から3000人の発症があるといわれています。

腸管出血性大腸菌感染の典型的な症状

腸管出血性大腸菌の症状は、典型的には腹痛と下痢などの消化器症状です。発熱はあることもあれば、ないこともあります。一般的に通常の胃腸炎より症状が重く、長引くことが多いです。そして、約半数の症例で下痢が次第に血性に変わります。

通常の胃腸炎のときに、時折便とともにピンク色の粘液のようなものが見られたり、便の表面にうっすら血のような色が付くことがありますが、この場合はもっとはっきりとした真っ赤な血便が見られます。これは、この大腸菌が持つベロ毒素が、腸管粘膜をはがしてしまうためです。

そして、ベロ毒素は大腸だけでなく、脳や腎臓の血管や、尿を作る尿細管と呼ばれる管にも同様の障害を起こすため、腎臓の血管が障害されて働きが弱まったり、血管が傷付き赤血球や血小板が壊されて貧血が進行(溶血といいます)し、黄疸が出ることもあります。脳の血管を障害すると脳梗塞ないし脳出血を起こしやすくなります。

こうした状態になるのは、大腸菌による胃腸炎症状が出た人のうち数%だけですが、発症から3日後から1週間前後で血便や血尿、体や結膜の色が黄色いといった症状が出た場合は、ただちに透析や全身管理を含めた高度な治療を受ける必要があり、命にも関わる非常に怖い病態です。

食中毒を防ぐためにはどうしたらいい?

食中毒予防の大原則は、「付けない」「増やさない」「やっつける」です。生肉と同じ容器やお箸、トング、まな板や包丁などの調理器具を共用しないことや、都度しっかり洗うこと、野菜や果物など生食するものもしっかり洗うことが鉄則です。また、当たり前のことですが大腸菌などの細菌は、一般的に室温以上ではすぐに増殖してしまうため、保管時の温度管理も重要です。コロナ禍でテイクアウトやデリバリーを利用する人も多いですが、常温で置かずいったん冷蔵庫で保管するか、早めに食べるように心がけましょう。さらに、大腸菌は熱に弱く、80度以上1分間の加熱で死滅するので、肉や、肉と一緒に調理するものにはしっかり火を通して菌を死滅させることが何より重要です。

腸管出血性大腸炎/溶血性尿毒症症候群は早期発見、早期治療がとても大切な病気です。万が一、生肉を食べたあとや、バーベキューをした後などに、激しい下痢症状や腹痛があるときには、この病気を疑う必要があります。医療機関を受診した際には、かならず医師にその情報を伝えてください。

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こちらの記事の監修医師

医療法人 啓信会きづ川クリニック

米田 真紀子

日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
1981年生まれ。平成19年滋賀医科大学医学部卒。同年4月より滋賀医科大学付属病院にて初期研修の後、同大学小児科学教室入局。平成23年より済生会滋賀県病院勤務の後、平成27年より京都きづ川病院勤務。
その間、3人の子供に恵まれ、育休・産休を取得しつつ、現在はその経験を生かして、患者とその家族の心に寄り添う診療を心がけている。一般診療から小児救急、新生児領域まで幅広い経験を有する。

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