最終更新日:2021年12月15日
チック症とは?大人も発症する?主な症状や原因・治療法などを解説

こちらの記事の監修医師
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック
飯島 慶郎

「チック症はどんな病気?」「子供に多いと聞くけど、大人でも発症する?」という疑問をお持ちのあなたへ。本記事ではチック症の主な症状や原因をはじめ、大人のチック症についても詳しく解説します。また、「病院は何科を受診すべき?」「治療方法は?」といったよくある疑問にもお答えしていくので、気になる人はぜひチェックしてください。
チック症の主な症状

チック症とは自分の意思とは関係なく、突発的な体の動きや発声が繰り返し起きてしまう病気を指します。特に発症しやすいのは4歳から11歳頃の男児で、自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害、強迫性障害、不安症、学習障害に合併しやすいのが特徴です。
2~3ヶ月程度の短期間で治まっていくケースと、軽い症状と重い症状を繰り返しながら数年続くケースがありますが、ほとんどの場合は成人するまでに改善していきます。
主な症状は、鼻を鳴らす、咳払いをするなどの「音声チック」と、まばたきや首振りなどの「運動チック」に二分でき、さらにその持続時間によって「単純型」と「複雑型」に分けられます。
音声チック
音声チックには、主に次のような症状があります。
【単純音声チック】
- 咳払いをする
- 鼻をすする、鼻を鳴らす
- 舌を鳴らす、舌打ちをする
- シューっという音を出す
- うなる、怒鳴る、叫ぶ
【複雑性音声チック】
- 卑猥な言葉や不謹慎な言葉を発する
- 同じ言葉を繰り返す
- 他人の言葉を真似して繰り返す
運動チック
運動チックには、主に次のような症状があります。
【単純運動チック】
- 頻繁なまばたき
- 突発的な首振り
- 肩をすくめる
- 顔をしかめる
- 口を曲げる、唇を尖らせる
- 舌を突き出す
【複雑性運動チック】
- 突然、人や物に触る
- 地団太を踏む、跳ねる
- 卑猥な身振りをする
- 他人の動作を真似する
チック症の症状は自分の意思で止めることができないにもかかわらず、周りからは単なるクセだと思われやすいため、障害として理解してもらえないことも珍しくありません。
チック症の主な原因

チック症の発症には本人の生まれ持っての性格や、親の育て方などは特に関係ありません。主な原因としては、次の3つが挙げられます。
- 神経伝達物質の働きの偏り
- 不安やストレス・ホルモンバランス
- 遺伝
では、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
原因1:神経伝達物質の働きの偏り
チック症は、脳内で情報を運搬する役割を担う神経伝達物質の1つであるドーパミンの働きが偏ることが原因で起こると考えられています。
ドーパミンの働きを抑えるハロペリドールという医薬品を使用することで、チック症の症状に改善が見られると臨床医学的にも証明されています。
原因2:不安やストレス・ホルモンバランス
一過性のチック症の場合は、不安やストレス、ホルモンバランスの影響など、心因性の原因によって発症するケースが多いとされています。
たとえば進学、就職、転職といったライフスタイルの大きな変化や、親しい人や愛するペットとの別れ、PMS(月経前症候群)などが関係していると考えられます。
ただし、このような場合は環境に慣れることで自然と症状が改善していくケースがほとんどのため、過度に心配する必要はありません。
原因3:遺伝
チック症の発症には遺伝的な要素も関係していると考えられており、具体的には神経の発達にかかわるSLITRK1という遺伝子の異常が関与している可能性があるとされています。
ただし、1人目の子供がチック症になったからといって、必ずしも2人目も発症するかというと、そういうわけではありません。チック症は環境的な要因や心理的な要因など、さまざまな事柄が絡み合って発症に至ります。
1年以上チック症が治らない場合は慢性チック症かトゥレット症候群

チック症は、症状が続いている期間の長さによって大きく2種類に分けられます。1年以内に症状が治まる場合は「一過性チック症」、音声チック・運動チックのいずれかの症状が1年以上続く場合は「慢性チック症」です。
また、音声チックと複数の運動チックの両方が1年以上続いている場合は、トゥレット症候群(トゥレット障害)と診断されます。
チック症になるのは子供だけ?大人も発症する?

チック症の診断基準は「18歳未満で発症したもの」と定義されているように、大人になってから初めてチック症を発症するというケースは非常に稀です。
「成人してからチック症になった」というケースのほとんどは、子供の頃に診断されていなかったものが継続して徐々に重症化した、もしくは再発したものと考えられます。
また、大人のチック症はうつ病や双極性障害、アルコールやタバコなどの物質乱用といった病気を合併している場合もあり、さまざまな研究が進められています。
大人の場合はチック症以外の病気が原因のケースもある
大人のチック症の多くは子供時代からの継続、あるいは再発だと考えられますが、大人になってから初めてチック症のような症状が現れた場合は、下記の原因も考えられます。
- てんかん
- ジストニア
- 薬物(コカインやアンフェタミンなど)の使用による副作用
- ハンチントン病やウイルス脳炎などの後遺症による脳の中枢神経障害
てんかんとは、突然意識を失ったりけいれんが起こったりする「てんかん発作」を繰り返す脳の病気で、年齢や性別に関係なく発症するのが特徴です。一定のリズムで手足をガクガク曲げ伸ばしする発作や、全身や手足が一瞬ビクッと動く発作などは一見チック症の症状に似ているため、区別しにくいことがあります。
ジストニアは難病に認定されている病気の1つで、運動を行う回路に混乱が生じる⑦7ことで体の筋肉が無意識にこわばり、異常な姿勢や運動を起こします。自分の意思とは関係なく顔の筋肉がピクついたり、手足や首がねじれたりする症状があるため、チック症と勘違いしてしまうことも少なくありません。
また、コカインやアンフェタミンなど特定の薬物を使用している人や、ハンチントン病やウイルス脳炎などの病気にかかった人は、チック症の症状が見られることがあります。ただし、薬物や他の病気が原因で症状が引き起こされた場合は、チック症とは診断されません。
チック症に関するよくある質問

ここからは、チック症に関するよくある質問にお答えしていきます。
大人のチック症は病院の何科を受診すればいい?
チック症は18歳未満の子供に発症することが多いため、主に小児科や小児神経科、児童精神科で扱われています。
大人の場合は、心因が絡んでいないと思われる場合は神経内科、心因の存在が疑われるときには心療内科、精神科を受診するのが適切でしょう。
NPO法人日本トゥレット協会のウェブページには「トゥレット症候群が診察できる医療機関一覧」が記載されているため、併せて参考にしてください。
チック症の検査や診断はどのように行われる?
チック症は、症状の種類や持続時間を問診や視診によって診断するケースがほとんどです。
発症してから1年以内の「一過性チック症」、音声チックか運動チックのどちらかの症状が1年以上続く「慢性チック症」、音声チックと運動チックの両方が1年以上続く「トゥレット症候群」の3つの病型に分けて診断されます。
症状や経過から比較的容易に診断がつくことが多いチック症ですが、てんかんや他の病気と区別がつきにくい例もあります。また、発達障害や学習障害、高次脳機能障害などと合併するケースもあり、鑑別や原疾患の特定が必要な場合や、施設によっては下記のような特殊な検査が併用される場合もあるでしょう。
- 脳波検査
- 睡眠ポリグラフ検査
- 衝動性眼球運動検査
- 表面筋電図
- 発達(知能)検査
チック症の治療方法とは?
チック症の治療は、症状の度合いによって方法が異なります。
比較的症状が軽い場合は、できるだけ精神的・肉体的なストレスを軽減できるよう環境を整え、心理教育や認知行動療法などによって回復を目指します。
心理教育では、本人や家族、学校、職場など、関りのある人たちに病気への理解を促します。もともと周囲の人たちの理解が得られている場合は、行われないケースも少なくありません。
認知行動療法とは、ものの考え方や受け取り方に対して働きかけることで、気持ちを楽にしたりストレスを軽減させたりする精神療法の1つです。
具体的には「なぜその行動をとりたくなるのか」という原理や理屈を本人が理解し、チック症の症状よりも目立たない別の方法で衝動をコントロールする方法を学んだりします。「チック症を自分でコントロールできる」という認識に変われば、症状に怯えて過ごすこともなくなり、精神的にとても楽になります。
また、症状が重い場合は薬物療法が取り入れられる場合も珍しくありません。たとえば、本人のセルフイメージが著しく下がっている場合は抗精神病薬が使われたり、チック症の症状がひどい場合にはクロナゼパムやジアゼパムなどが使われたりすることがあります。
チック症は漢方薬でも治せる?
漢方薬の力だけでチック症を完治させられるとは限りませんが、症状の緩和に期待できる漢方薬は存在します。
チック症の症状の多くは、筋肉の動きを制御できないことによって起こります。東洋医学の理論では、筋肉は肝(かん)がコントロールしており、肝の働きが弱まるとチック症につながると考えられています。そのためチック症の治療に漢方を取り入れる際は、肝の機能を回復させることを中心に進められるケースが多いと言えるでしょう。
チック症の治療に使われる生薬の例としては、次のようなものが挙げられ、これらの生薬含んだ漢方薬が選ばれることが多いでしょう(例:抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、柴胡加竜骨牡蠣湯、酸棗仁湯、加味帰脾湯、女神散など)。
【消耗した肝の血を補う生薬】
- 地黄(じおう)
- 当帰(とうき)
- 芍薬(しゃくやく)
- 阿膠(あきょう)
- 酸棗仁(さんそうにん)
- 竜眼肉(りゅうがんにく)
【精神的なストレスを緩和する生薬】
- 柴胡(さいこ)
- 枳実(きじつ)
- 陳皮(ちんぴ)
- 半夏(はんげ)
- 厚朴(こうぼく)
- 香附子(こうぶし)
【筋肉の震えやけいれんを鎮める生薬】
- 釣藤鈎(ちょうとうこう)
- 天麻(てんま)
- 竜骨(りゅうこつ)
- 牡蠣(ぼれい)
なお、漢方薬は1人1人の体質や症状に合わせて処方を変える必要があります。そのため、チック症の治療に漢方を取り入れたい場合には自力で選ぼうとせず、まずは漢方薬局や漢方に造詣の深い医師に相談するようにしましょう。
大人のチック症は芸能人に多いって本当?
チック症やトゥレット症候群だという噂がある芸能人は多く存在しますが、本人が公表しているわけではないため、実際のところはわかりません。
ただ、芸能人は誹謗中傷などを受ける機会が一般人より多いと予想できることから、精神的に疲弊しやすく、その分チック症が再発・重症化しやすい可能性も十分に考えられます。
まとめ:大人のチック症は周囲の理解も大切

今回はチック症の主な症状や原因、大人のチック症について詳しく解説しました。
大人になってからチック症が再発・重症化すると、静かにすべき場所で奇声をあげて周りに冷たい反応をされたり、面接や商談などがうまくいかなかったりと、生活に支障が出るケースが多くなります。
治療を始めればすぐに症状が治まるという病気ではないため、まずは周囲の人に病気をカミングアウトし、理解者を増やして誤解されにくい環境を整えることが大切です。
環境が整い、ストレスや不安を感じることが少なくなれば、徐々に症状も緩和されていきます。チック症とうまく付き合いながら、前向きに治療に取り組んでいきましょう。
この症状を治したい。記事を読んで今すぐ医師の診断を受けたいあなたへ。
イシャチョクのオンライン診療なら、予約なしで今すぐ医師とつながります。「今すぐ診療」ボタンから、オンライン上の仮想待合室に入りましょう。全国の医師、または近くの医師が、すぐにあなたを診察します。
全国のクリニックから検索したいあなたへ。
クリニックを探すクリニック検索
病気・医療情報検索
キーワード検索キーワード検索

こちらの記事の監修医師
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック
飯島 慶郎
〇病院名 :不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック
〇医師 :飯島 慶郎
〇アクセス:島根県出雲市大社町杵築東454
〇診療科 :心療内科学,臨床心理学,東洋医学,総合診療学
《経歴》
平成14年3月 島根医科大学医学部医学科 卒業
平成14年5月~ 島根医科大学医学部附属病院 第三内科 研修医
平成16年6月~ 三重大学医学部付属病院 総合診療科 専攻医
平成21年4月~現在 浜田市国保健康保険(大麻、弥栄、波佐、あさひ)診療所 浜田市嘱託医師(H23~大麻診療所長)
平成24年1月~現在 浜田市消防本部 嘱託産業医
平成30年1月~現在 統合医療 出雲いいじまクリニック 院長(浜田市嘱託医と兼任)
平成30年5月~現在 みずほ証券松江支店 嘱託産業医
仮想待合室型オンライン診療対応の医療機関募集中
イシャチョクでは、予約無しでオンライン上の「仮想待合室」に入れば、診療科目毎の医師が順番に診察してくれる、仮想待合室型のオンライン診療システムを提供しています。以下のボタンをクリックして、オンライン診療に対応しているクリニックを検索してみてください。
-
- 島根県出雲市大社町杵築東454地図を見る
- 一畑電鉄 出雲大社前駅
- 0853-25-8724
- 内科 精神科 心療内科 精神神経科
島根出雲市大社町の心療内科・漢方クリニック。 行き渋り・不登校・心身症(学校に行く前の頭痛、腹痛etc)・起立性調節障害(朝起きられない)発達障害(ADHD、自閉症スペクトラム)・HSC(敏感で傷つき...
- 09:00 - 17:00
- 月
- ●
- 火
- -
- 水
- -
- 木
- -
- 金
- ●
- 土
- -
- 日
- -
- 祝
- -
- 駐車場あり