最終更新日:2022年4月18日
歯に被せるだけで歯列矯正できるマウスピース矯正について解説!

こちらの記事の監修医師
横浜マウスピース矯正歯科
上田 桂子
ほとんどの人は何かしらの悪い歯並びを有しています。歯並びが気にならない人もいるでしょうが、前歯の歯並びが悪いせいで見た目が気になる人、奥歯の歯並びが悪いせいで嚙み合わせが気になる人、歯ブラシが届かず歯磨きしにくい人などさまざまな悩みがあります。中でも見た目が気になるから歯科矯正を行うといった人は多いです。
また、歯科矯正をして歯並びが良くなることで見た目だけでなく、奥歯のかみ合わせが良くなって物が食べやすくなり、汚れが残りにくく歯磨きしやすい歯になるので、虫歯や歯周病の予防になります。
歯科矯正といえば歯の表面にブラケットとワイヤーを着けた装置が印象的ですが、自分の歯に合わせて作成した透明な樹脂製のマウスピースを歯列に被せて歯並びを変えるマウスピース矯正というものもあります。
マウスピース矯正は、かかる費用や治療終了までの期間、またワイヤー矯正とは違うメリット・デメリットがあります。今回は、透明で目立たないマウスピース歯科矯正について解説します。
マウスピース矯正とは
自分の今の歯並びとゴールの歯並びに合わせたマウスピースを何枚も作り、1〜2週間ごとにマウスピースを着け替えて歯を少しずつ動かし、ゴールとなるきれいな歯ならびに近づけていく矯正方法です。
マウスピースは薄く透明で目立たず、違和感も少ないというのが特徴です。
マウスピース矯正メーカーは国内外にたくさんの種類があり、比較的重篤な症例まで改善できる全体矯正が可能なものもあれば、ごく軽度な前歯の部分矯正しかできないものもあります。歯科医院によって異なる種類のマウスピースを導入していることも珍しくありません。
また同じ症例でも、歯科医院で扱っているマウスピース矯正の適応範囲、歯科医師の経験や判断により、マウスピース矯正が可能かどうかが異なります。
マウスピース矯正の値段
マウスピース矯正の値段は全体矯正と部分矯正で異なります。また、相談料や検査費用などが追加でかかることがあります。
全体矯正|約80〜120万円
歯全体を矯正するためのマウスピース矯正の相場は80〜120万円ほどです。
マウスピースの発注枚数や上限の有無、追加発注にかかる料金の有無で変わります。安いコースでもマウスピースを発注できる枚数が少ないと、思うような結果が出ないこともあるので注意が必要です。
部分矯正|約40万円
前歯のみ動かすなど、全体ではなく部分的な歯列矯正であれば40万円ほどが相場です。
奥歯は基本的に範囲に含まれないため、値段が安い代わりに適用範囲は全体矯正より狭くなります。
そのほかの費用
矯正費用には以下の料金が含まれていない場合があり、追加料金がかかることがあります。
- 相談料 無料~1万円
- 精密検査料 2~5万
- 定期通院費 3~5千円
- ワイヤーやゴムなどの追加装置 1~10万円
- 治療後の保定装置 3~7万
歯科医院ごとに変わるので金額はしっかり相談・確認しましょう。複数の歯科医院で相談して治療内容と金額に納得のいく歯科医院を選ぶのも重要です。
マウスピース矯正の治療期間
歯科矯正というのは長い時間がかかるというイメージがありますが、実際にどれくらいの期間がかかるか解説します。
- 全体矯正なら1〜2年
- 延長になることもある
全体矯正なら1〜2年
一般的に全体矯正であれば治療開始から1〜2年ほどかかり、難しい症例であればそれに加えて1年ほど治療期間が長めに設定されることもあります。
治療が終われば後戻りを防ぐための保定期間が1〜2年あるので、合計すると4年、長ければ5年ほどかかります。前歯のみの部分矯正であれば数ヶ月〜1年で完了します。
矯正治療では並べた歯の後戻りを抑えることも必須なので、きれいに並んだ歯を維持するために保定を行う期間も考慮して計画しましょう。
延長になることもある
マウスピースの装着をサボってしまい歯並びが予定通りに動かなかったり、虫歯や歯周病になって矯正を中断したりすると、治療終了までの期間が延びてしまうことがあります。
マウスピース矯正ではどうしても患者の努力に結果が左右されます。もし面倒くさいからといってマウスピースの装着をおろそかにしてしまった結果、予定通りに歯が動かず作ったマウスピースが入らなくなり治療が進まないということも起こりえます。
また、マウスピースを着けたまま飲食をしたり、食後の歯磨きをしないままマウスピースを着けたりしてしまうと汚れを歯に留めてしまい、虫歯や歯周病になるリスクを高めます。虫歯や歯周病になってしまうと矯正治療の中断や治療効果が弱まることすらあります。
期間が延びれば、マウスピースを作り直したり通院費用がかかったりするなど、追加で費用もかかることにもなります。スムーズに治療するためには、歯科医院の選択だけでなく、患者によるマウスピースの適切な管理も重要です。
マウスピース矯正のデメリット
口を開けたときに大きな装置が目立つワイヤー矯正とは反対に、マウスピース矯正の素材は薄くて透明な樹脂なのでほとんど気づかれません。また、自分でマウスピースを着け外しできることから、矯正中でも食事や歯磨きがしやすいのが最大のメリットです。
しかし、自分で着け外しできるからこそのデメリットも存在します。
- 1日20時間以上装着しなければならない
- 食事や歯磨きの度に外さなければならない
- 痛みはある
- 対応できない症例がある
- 矯正治療が終了しても後戻りする
- 歯科医師の能力に左右される
- 病名が付いても保険適用にならない
1日20時間以上装着しなければならない
1日20時間以上、マウスピースを装着する必要があります。装着時間はマウスピース矯正のメーカーによって前後します。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正はともに、器具に歯が触れていないと矯正力は働きません。ワイヤー矯正であれば24時間歯に着けっぱなしとなるので、無意識に歯は矯正されていきますが、自分で装置の着け外しを行うマウスピース矯正では、自分でマウスピースの装着時間や交換日を意識的に管理することが必要です。そのため、矯正の効果は本人のマウスピースの装着努力に左右されます。
マウスピースは寝ている間も装着しなければなりません。まれに寝ている間に無意識にマウスピースを外してしまい、意図せず装着時間が短くなってしまう人もいます。
マウスピースを外した時間が長くなると再装着した際に強い痛みが出ることもあり、痛いからといってさらに長い時間外したままにしていると、歯がずれてしまいマウスピースの再作成や計画の立て直しが必要になります。
マウスピースの再作成や計画の立て直しにはさらに時間がかかってしまうので、結果として本来の計画で立てた期間よりも治療期間が長くなってしてしまいます。
食事や歯磨きの度に外さなければならない
食事や歯磨きのときにマウスピースを外せるのは大きなメリットですが、人によっては手間がかかると感じることがあります。
食べたあとは必ず歯を磨いてからマウスピースを着けなければいけません。本来、舌や唾液が歯に触れることで歯の汚れを洗い流す作用がありますが、マウスピースが被さっている歯には舌も唾液も触れないので、歯の汚れが流されず蓄積して虫歯や歯周病になったり口臭が発生したりします。
また、マウスピースを着けたまま紅茶やコーヒーなどを飲んでいると、飲み物の色素がマウスピースに染み込んで黄色くなっていきます。マウスピースが黄ばむと、装着時に歯まで黄ばんで見えてしまいます。
そのほか、マウスピースは着け外すものなので、外したままどこかに忘れてくる、紛失してしまうという可能性もあります。
痛みはある
マウスピース矯正の痛みはワイヤー矯正よりも少ないですが、歯を動かすために矯正力をかけるとどうしても痛みが出ます。それでもワイヤー矯正よりも小さく歯を動かすので、比較的痛みは楽という声が多いです。
マウスピースの着け始めは歯の痛みや口の中の違和感で喋りにくいということもありますが、ほとんどの人が1週間ほどで慣れてきます。
人によっては、マウスピースの縁や顎間ゴムなどの追加装置が口内に当たって痛みが生じたり口内炎ができたりすることがありますが、マウスピース矯正はワイヤー矯正よりも装置の角が少なく、ワイヤーの先が飛び出ることもないので、歯が動く痛みと装置が口内に当たる痛みの両方が少なくて済みます。
対応できない症例がある
ひと口に歯並びが悪いといっても、傾き・捻れ・高さ・位置の違い・骨の大きさなどが原因で起こるさまざまな症例があります。
そのため、マウスピース矯正だけでは対応できない症例もあります。マウスピース矯正の種類によって適用できる範囲が違うため、自分の歯並びの適用範囲に合ったマウスピース矯正かどうかも重要となります。
またマウスピース矯正のみで対応できない歯並びでも、部分的なワイヤー矯正を併用することで適用範囲が広がることもあります。適用範囲は歯科医師の知識や経験でも変わる部分なので、必要があれば複数の歯科医師の意見を聞くのもいい方法です。
矯正治療が終了しても後戻りする
ワイヤー矯正・マウスピース矯正のどちらも、治療が完了したあとに歯の後戻りが生じます。ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも後戻りのしやすさは同じですが、歯並びを定着させて後戻りを予防するためには、保定装置を使わなければなりません。
歯がきれいに並んだからといって、保定の必要性を感じずに保定装置を着けるのをサボってしまう人がいますが、保定装置をしないと後戻りが起こるので、歯科医師の指示通りに使用しましょう。
本来、歯は頬と舌の圧力に押されてバランスのいいところに定着します。矯正で歯並びをよくしたあとも同じく頬と舌からの圧力が歯の位置に影響を与えるので、骨が安定して歯が動きにくくなるまでは保定装置で固定しなければなりません。
歯科医師の能力に左右される
歯科矯正とは見た目だけでなく、噛み合わせや口の機能なども考慮して行う繊細な治療です。マウスピース作成はシステムを運営している業者に外注となりますが、計画の作成や診断は歯科医師が行うため、担当歯科医師の知識や経験によって適応範囲や治療結果が変わることがあります。
歯科医師との相性も大切ですが、できるだけ知識や経験のある歯科医師を選びましょう。マウスピース矯正を行うには、基本となる矯正学の知識をベースとして、従来の矯正とは異なる知識や経験も必要です。より正確で効果的な計画を立てるために、セファロレントゲンや歯科用CTを撮影して分析しているか、そのうえでワイヤー矯正以外に可能な手段としてマウスピース矯正を提案しているかを考える必要があります。
経験の浅い歯科医師が無理のある計画を立てたり、計画がなくマウスピースの外注先に丸投げして失敗するケースもあるので、治療を依頼する歯科医師は慎重に選ばなくてはなりません。
病名が付いても保険適用にならない
矯正治療は審美目的のため自費診療となりますが、顎変形症などで矯正治療の必要性が認められた疾患を有する場合は、健康保険適用で矯正治療を受けることができます。
しかし使用する矯正装置には制限があり、マウスピース矯正は健康保険適用の対象外です。特定の疾患を有している場合は、歯の表側に金属製の装置を着けるワイヤー矯正なら保険適用になりますが、マウスピース矯正は日本の法律で認められていないため、使用する矯正装置にマウスピースを選べば、特定の疾患があると認められてもすべて自費になります。
また、矯正用マウスピースは法律で認められていないことで、たとえ予期しない健康被害が生じたとしてもマウスピース矯正は被害者救済制度の対象外となっています。
マウスピース矯正のメリット
耳の痛いデメリットを挙げましたが、マウスピース矯正にはワイヤー矯正にはないメリットがあるのも事実です。
- 見た目が良くなる
- 目立たない
- 痛みがほとんどない
- 自分で取り外せる
- 金属アレルギーの心配がない
- 同時にホワイトニングができるマウスピース矯正もある
- 幅広く対応できる
- 治療後の歯並びを治療前に確認できる
見た目が良くなる
矯正の最大のメリットは歯並びがきれいになることです。笑うと相手の目線が歯並びの悪い口元に向いて嫌だという人も思い切り笑うことができるようになります。
歯並びが良くなることは矯正そのもののメリットではありますが、歯並びが良くなることでコンプレックスだった笑顔に自信が持てるようになり、笑顔が多くなることで顔全体の印象も良くなります。
目立たない
装置が目立たないことは、マウスピース矯正の最大のメリットです。薄くて透明な樹脂なので他人からは矯正器具を着けていることにほとんど気づかれません。
また突然の結婚式やパーティーなどのイベントも、矯正器具の見た目を気にすることなく楽しむことが可能です。ワイヤー矯正のようにイベントのために歯科医院で一時的にワイヤーを外してもらい、終わってからまた着け直してもらうといった手間もありません。
痛みはほとんどない
歯を動かす痛みはあるものの、段階的に歯を動かすためワイヤー矯正よりも痛みは軽く感じます。
また、ワイヤー矯正のように金具や装置の角で粘膜を傷つけることが少ないので、口内炎による痛みも出にくいです。マウスピースに慣れてしまえば特に痛みや違和感もなく、発音にも影響がないという人もいます。
自分で取り外せる
ワイヤー矯正はどうしても歯と器具の間に食べ物が詰まり、自力で清掃するのも一苦労ですが、マウスピース矯正ならマウスピースを外していつも通りに歯ブラシやフロスを使うことができます。またワイヤーがないので器具に食べ物が詰まることを気にせずに好きなものを食べられます。
ワイヤー矯正のようにワイヤーやブラケットが着いているとフロスは通せません。歯だけではなく、ワイヤーに挟まったり絡まったりした食べ物も歯ブラシや歯間ブラシではなかなか取れません。ワイヤーやブラケットから取りにくい粘着質なお菓子も控えるよう指導されます。
マウスピース矯正なら歯磨きのときに自分で取り外せるので、いつも通りに歯ブラシやフロスを使い歯を清掃することができます。そのため、ワイヤーやブラケットに粘着しやすい食べ物も食べることができます。
金属アレルギーの心配がない
マウスピースは樹脂製のため、金属アレルギーのある人でも問題なく装着できます。
銀歯など、歯科で使われる金属がアレルギーの原因となる人がいます。アレルギーを発症すると、口内炎など口の粘膜の炎症、顔や口周りの皮膚の荒れや炎症が現れることがあります。
重篤なものになると、口や顔だけでなく背中や手足にまで全身に皮膚炎が生じることがあります。すでに金属アレルギーを持っている人や矯正ワイヤーで金属アレルギーになってしまった人には、マウスピース矯正は有用な方法です。
同時にホワイトニングができるマウスピース矯正もある
マウスピース矯正の種類によっては、矯正用マウスピースを利用してホームホワイトニングができるコースを提供しているところもあります。
ホームホワイトニングとは、マウスピースにホワイトニング剤を注入し、決められた時間だけ装着して自宅で歯を白くする方法です。
ホームホワイトニングには、通常はホワイトニング用に作成したマウスピースを用いますが、この場合は矯正用のマウスピースを使ってホワイトニングを行います。矯正をするからには歯の黄ばみも取って白く美しい歯並びを目指したい人はチェックすべきメリットでしょう。
ただし、すべてのマウスピース矯正がホワイトニングを同時に行えるわけではないので、注意しましょう。
幅広く対応できる
マウスピース矯正は、メーカーや歯科医師の判断によっては多くの歯並びに対応できます。
- 空隙歯列(すきっ歯)
- 上顎前突(出っ歯)
- 下顎前突(受け口)
- 交叉咬合(噛み合わせのずれ)
- 過蓋咬合(噛み合わせが深い)
- 叢生(ガタガタの歯並び・八重歯)
- 開咬(噛んでも前歯が閉じない)
マウスピース矯正はワイヤー矯正よりも歯を奥に動かす後方移動を得意としています。ワイヤー矯正では抜歯して作っていた歯を並べるスペースを、マウスピースで歯を後ろに移動することで作れるので、抜歯をしなくても前歯を引っ込めたり歯を並べたりすることができます。
また、歯を奥歯の方に移動させる動きに加え、歯の横幅を少しだけ削ることで歯を並べるスペースを追加できるので、歯並びによっては非抜歯での治療ができる可能性もあります。
さらに、ワイヤー矯正や拡大床などの追加の装置を併用することで、より多くの症例もマウスピース矯正で対応できるようになります。
治療後の歯並びを治療前に確認できる
マウスピース矯正を提供している歯科医院の多くが3D光学スキャナによる型取りを導入しており、矯正相談の段階で矯正後の歯並びをモニターを見ながら相談・確認して、歯の移動計画を視覚的に見ることもできます。
3D光学スキャナによる型取りは、スキャナから出る光を歯に当てるだけなので、従来の型取りで使っていたシリコンや粘土を使用した型取りよりも粘膜への接触面が少なく、型取り材料が口の奥に触れることで起こっていた嘔吐反射が起こりにくいのもメリットです。
マウスピース矯正での失敗例
矯正は成功する前提で行うものですが、患者の体質や管理力、または歯科医師の無理のある計画などのさまざまな要因によって、以下のようなあまりよくない結果になってしまうこともあります。
- 歯根が露出した
- かみ合わせが治療前より悪化した
- 虫歯・歯周病になった
- 抜歯で倒れた歯を起こせなかった
- 効果が薄かった
- 終了までの期間が延長した
歯根が露出した
歯が移動した先に歯茎があっても歯を支える骨がない場合や、骨の再生を考慮していない計画、歯周病で骨の再生力が弱まっていた場合には、矯正で歯茎が下がって歯根が露出することがあります。
これはワイヤー矯正やマウスピース矯正でも共通で、どの矯正方法でも挙げられるリスクのひとつです。骨が薄く歯茎も薄い部分というのは、加齢によってある程度生じるものですが、強い歯磨きの刺激や食いしばりからの刺激によっても歯茎が下がりやすい部分でもあります。
さらに日本人は前歯の骨・歯茎のどちらも薄い人が多く、矯正後の歯肉退縮が起こりやすいです。退縮してしまった歯茎は自然には戻らず、移植治療を行うことでしか回復できません。歯肉退縮を防ぐために、歯周組織の回復を見ながら治療計画の見直しをすることが必要です。
噛み合わせが治療前より悪化した
見た目は良くなっても噛み合わせが治療前より悪化することがあります。
矯正治療は歯を並び変えるため治療中は一時的に歯並びが悪くなりますが、治療が完了すれば噛み合わせも改善されるものです。しかし治療後の噛み合わせを考慮していない計画や、奥歯の調整が必要な症例で前歯だけ動かす部分矯正で対応したこと、マウスピースを着けたまま食いしばることで起こる奥歯の沈み込みなどが原因で起こります。
噛み合わせが悪くなれば、食べ物を咬みにくいだけでなくその歯だけに強い力がかかって歯周病になったり、顎関節症や肩こりを起こすなどの悪影響も起こります。
虫歯・歯周病になった
マウスピース装着前の歯のケアが十分に出来ていなければ、虫歯や歯周病になるリスクが上がります。
特に矯正中は重度の歯周病によって歯槽骨が弱くなると、矯正後の歯肉退縮が起こり歯根が露出しやすくなります。虫歯や歯周病が重症化するとせっかくきれいに並べた歯の将来的な寿命が短くなってしまうことに繋がります。
また、虫歯治療で歯の形が変わると矯正用のマウスピースが入らなくなるので、作り直しが必要になります。
マウスピース矯正は歯ブラシもフロスもいつも通りに使えますが、どんなに頑張っていても一人で数年間虫歯・歯周病を作らないというのは大変なものです。歯科医院が歯のクリーニングを提供していれば活用しましょう。
抜歯で倒れた歯を起こせなかった
歯を並べるスペースを得るために抜歯をしたあとにマウスピース矯正を行ったものの、抜歯で隣の歯の支えがなくなった歯が空きスペースに倒れこんできてしまうことがあります。
普段歯は自然に動いているようには見えませんが、その印象に反して非常に動きやすいものです。舌と頬からの圧力と隣の歯という支えによって歯はその位置に定着しますが、ひとたびそのバランスが崩れると歯はすぐに傾いてしまいます。倒れ込んだ歯をマウスピースでリカバリーできない場合は、奥歯を起こすための追加治療が必要です。
効果が薄かった
治療計画がよくてもマウスピース装着に関する自己管理が甘かった場合は、計画した通りの効果を得られません。
20時間以上の装着時間ができなかった、途中で虫歯や歯周病になった、保定装置を装着しなかったことによる後戻りなどの原因によって計画通りに進まないと、想定よりも効果が弱くなります。
終了までの期間が延長した
マウスピースの装着時間が短いことでマウスピースが会わなくなって作り直しや追加発注が必要になったり、虫歯や歯周病で矯正を中断したりすると、矯正終了までの期間が伸びることがあります。
IPR(歯を並べるスペースを確保するために、歯の側面を削る処置)のやり過ぎで歯と歯の間のスペースが埋まらない、歯の動きが想定よりも悪いなどの理由で、リカバリーの期間が必要になることもあります。
マウスピース矯正の失敗を回避するために気を付けること
高い費用をかけて美しくなるための治療だからこそ、再治療になるような失敗は避けなければいけません。そのためにはいくつかの気を付けるべき点があります。
- 経験・実績のある歯科医師を選ぶ
- 治療開始前に些細なことでも相談して疑問をなくしておく
- 装着時間や交換スケジュールを守る
- マウスピースは手入れを欠かさずに行い清潔に保つ
- マウスピース装着前の歯磨きを怠らない
- 矯正中に違和感があればすぐに歯科医師に相談する。
もし些細な疑問でも残してしまうと、いざ治療を始めると必ず不満として現れてきます。相談した歯科医師の計画に疑問があれば、別の歯科医師に相談して検討することも重要です。不満を感じながら続ける矯正ほど不快なものはありません。どんな疑問でも質問し、納得できる矯正治療を行いましょう。
市販のマウスピース矯正
矯正用マウスピースは歯科医院で作成するもの以外に、市販されているものもあります。インターネットで購入することができ、歯ぎしりによる歯の摩耗軽減とともに、軽度の歯列矯正ができるというキャッチコピーで販売されているものです。実際に効果があるという評価もありますが、歯科医院のマウスピース矯正と市販のマウスピース矯正は別物です。
- 市販のマウスピース矯正は既製品のため価格は安い
- 歯科医院のマウスピース矯正とは別物
市販のマウスピース矯正は既製品のため価格は安い
市販のマウスピースは歯科医院のマウスピースと比べると非常に安いため、気軽に始めることができます。価格は、安いもので数千円程度です。歯科医院であれば総額100万ほどかかるので、およそ100分の1の値段となります。
実際に、些細な噛み合わせのズレならきれいにできたという声もあります。それでも市販のマウスピース矯正は歯型を取ることもなく歯の1本1本に密着する形ではないため、歯列の細かな傾きや乱れは治せません。
歯科医院のマウスピース矯正とは別物
歯科医院のマウスピースは医療器具としてオーダーメイドで作成するものです。一方、市販のマウスピース矯正は個人の歯並びに合わせて作成するマウスピースではないため、歯に適切な動きを与えるものではなく、歯科医師の計画もないので矯正失敗の可能性も高くなります。
歯科矯正とは、経験ある専門医が個人の歯冠・歯根・顎骨に合わせて精密な計画を立てて行うものです。知識経験のない素人が自分に合わないマウスピースを使うと、大切な歯が目も当てられないほど酷いものになってしまう危険性があります。歯は換えの効かない一生ものだからこそ、安さでリスクを選んでしまうのは非常に危険です。
まとめ
マウスピース矯正は歯並びをきれいにし、治療中も矯正器具が目立たないようにしたいという人にはとても魅力的な方法です。メリットデメリットなどを考慮して矯正器具を選び、きれいな歯並びになりましょう。
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こちらの記事の監修医師
横浜マウスピース矯正歯科
上田 桂子
2005年 愛知学院大学歯学部 卒
2004~2016年 医療法人スワン会 名古屋/東京院にて勤務
矯正Headドクターとしてインビザラインに取り組み、2013年に日本初ブラックダイヤモンドステータス獲得
2011年~ インビザラインサミット(バルセロナ・マカオ・ローマ・ラスベガス・シンガポールなど)参加
2016年 フリーランスとして独立
2019年 invisalign Global Gallaly SpotLight Caseに選出
現在、矯正診療、セミナー・教育講演を実施
2021年 株式会社k-Crowd設立
仮想待合室型オンライン診療対応の医療機関募集中
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