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最終更新日:2022年5月14日

「健康のため」のはずが歩行困難に…ランニングでのケガを防ぐ「たった1分」の予防法【専門医が解説】

こちらの記事の監修医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
塗山 正宏

※画像はイメージです/PIXTA

健康のためにランニングを始めたら、走っている最中急に膝が痛くなった……ランナーにとって、このような経験はけっして珍しいものではありません。しかし、場合によっては歩行困難になってしまうリスクもあると、世田谷人工関節・脊椎クリニックの塗山正宏先生はいいます。本記事では、こうした「ランナー膝」の対処法と予防法について解説します。

走ると急激に膝が痛む「ランナー膝」の原因

走っているときなど、膝の外側が急激に痛くなる、いわゆる「ランナー膝」……特に、長距離を走ったあとなどに起こりやすいスポーツ障害で、プロのマラソン選手だけでなく、一般の人たちのあいだでも決して珍しい症状ではありません。一体、なぜ起こるのでしょうか。

正式名称は「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」

ランナー膝とは通称で、正式には「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」といいます。「腸脛靭帯」とは、太ももの外側に走っている靭帯のこと。[図表1]のように、腸脛靭帯は腸骨(=骨盤の骨)から始まって、脛骨(=すねの骨)に付着している、大きな組織です。

[図表1]腸脛靭帯

人間が走っているとき、膝は伸展と屈曲を繰り返します。そのたびに腸脛靭帯と、大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか=膝の外側上方にある骨のでっぱり)が擦れ、摩擦が生じます。そのため、接触面が炎症を起こし、膝の外側にズキズキとした痛みを生じさせてしまうのです。これが、「ランナー膝」が起こるメカニズムです。

「ランナー膝」は、ランニング初心者や長距離ランナーに多い

ランナー膝が起きやすいのは、次のような人たちです。

  • 陸上競技をしている人。特に長距離ランナー、マラソンランナー
  • ランニング初心者
  • 脚の筋力が弱い人
  • 過度な練習をしている人
  • O脚などで膝の外側に負担がかかりやすい人

「ランナー膝」の初期は、運動中や運動後に痛みを感じます。特に膝を踏み込んだとき、膝の外側にいやな痛みを感じることが多いでしょう。初期では走っているあいだだけ痛みが現れ、安静にしていると痛みが消えますが、症状が悪化すると、歩行時や安静時にも膝の外側に痛みを感じるようになります。

「ランナー膝かもしれない」と思ったら、次の項目をチェックしてみましょう。ひとつでも当てはまったら、ランナー膝の疑いがあります。

  • 運動中や運動後、膝の外側に痛みを感じる
  • 主に下り坂を走るときに、痛みが強くなる
  • 久しぶりにマラソンを始めたら、膝の痛みが出るようになった
  • ある程度の距離を走ると、痛みが出る
  • 特に、脚を伸ばすときに膝の外側に痛みを感じる

「ランナー膝」より重症…間違いやすい3つの症状

長距離を走っているときや走ったあとなどに膝の周辺に痛みが生じるのは、ランナー膝だけではありません。実は、違う原因が隠れていることもあります。

よくランナー膝と間違いやすい疾患や障害には、次のものがあります。

1.変形性膝関節症

膝関節のクッションとして機能している軟骨が、加齢や筋肉量の低下などによりすり減って痛みが生じる病気のことを「変形性膝関節症」といいます。中高年になると、膝の周辺に痛みを感じる人が増えますが、これらのほとんどがこの変形性膝関節症によるものです。

軟骨がすり減ると、関節のすき間が狭くなり内側の骨が剥き出しの状態になります。すると、骨のへりにトゲ状の突起物ができたり、骨が変形したりして、歩き出そうとすると膝がこわばったり、違和感を覚えたりします。

初期では膝のこわばりや重だるさを感じる程度ですが、進行すると安静時でも膝の痛みが続き、階段の昇降が困難になります。さらに悪化すると、歩いたり、座ったり、しゃがんだりするのも難しくなり、日常生活に支障をきたすようになります。

2.ジャンパー膝

ランニングのほか、バレーボールやバスケットボールなどジャンプを長時間繰り返すことで起こることから呼ばれている「ジャンパー膝」。正式には「膝蓋靭帯炎(しつがいじんたいえん)」といいます。

これは膝蓋骨と脛骨を繋いでいる膝蓋靭帯に、ジャンプやダッシュなどの繰り返しの動作で負荷がかかることによって炎症が起きるものです。軽症のうちはあまり支障はありませんが、進行するとスポーツをしているときだけでなく平時でも痛みが続き、膝蓋靭帯の部分もしくは完全断裂を引き起こすこともあります。

3.鵞足炎(がそくえん)

鵞足とは、太ももの内側から膝内側にかけて伸びている3つの筋肉の総称のこと。膝の曲げ伸ばしを繰り返し行うことでこの部分に炎症が起き、痛みが生じます。

「ランナー膝」と他疾患を見分けるポイント

ランナー膝と間違いやすい疾患や障害のうち、特に注意したいのが「変形性膝関節症」です。変形性膝関節症の場合は、放置すると少しずつ症状が進行し、最悪の場合は歩行できなくなるというリスクもあります。そのため、まずはいま、生じている膝の痛みが本当にランナー膝かどうか正しく見極めることが大切です。

1.どんなときに痛みが出るのか

まずはどんなときに痛みが出るのかを確認しましょう。「走っているとき」や「走ったあと」に痛みが出るならランナー膝の可能性が高いです。しかし、変形性膝関節症やジャンパー膝でも、走っているときなどに痛みが出ることもあるので、これだけで判断することは困難といえます。

2.どこに痛みが出るのか

ランナー膝の場合、痛くなるのは「膝の外側」です。もし、「膝のお皿のすぐ下あたり」が痛む場合はジャンパー膝の疑いがあります。

また、「膝の内側」にズキズキとした痛みを感じる場合には鵞足炎の疑いがあります。変形性膝関節症の場合には、「膝全体」に痛みが現れたり、こわばりが生じたりします。

しかし、痛みのある場所を正確に判断することは困難ですし、複数の箇所が同時に痛むということもあります。変形性膝関節症の場合には、放置すると症状がどんどん進行してしまい、歩行が困難になることもありますので、そうした重症化を防ぐためには医師の診察を受けるのが一番です。

痛みが出たらそのまま様子をみたり放置したりせず、早めに整形外科を受診することをおすすめします。

ランナー膝を防ぐ!毎日たった1分間の「スクワット」

ランナー膝を予防するために大切なことは、下肢の筋力をつけることです。脚の筋肉がしっかり鍛えられていれば、膝を安定して支えられるようになり、膝の負担を減らすことができます。

膝の負担を減らすという観点からいえば、鍛えるべきは「大腿四頭筋」「ハムストリングス」などの大きな筋肉です。そのために最も効果的なのは、なんといってもスクワット。スクワットの素晴らしいところは、足の距離や角度を少し変えるだけで、効かせる筋肉を変えられるということです。

ここではランナー膝だけでなく、変形性膝関節症などの予防にも役立ち、若々しい膝関節を保つためのスクワットを3パターン紹介します。

1.脚の筋肉をバランスよく鍛える「定番のスクワット」

[図表2]定番のスクワット

①両足を肩幅くらいに広げ、つま先を前に向ける。
②両腕を胸の前でクロスする。
③背中をまっすぐにしたまま胸を張り、膝の高さまでゆっくりと重心を下げる。
④ゆっくりともとの位置に戻る。
これを10〜15回繰り返す。

このスクワットは、大腿四頭筋・ハムストリングス・臀筋をバランスよく鍛えることができる定番のパターンです。膝がつま先より前に出ないように注意しましょう。

2.臀筋と内転筋に効く「ワイドスタンスのスクワット」

[図表3]ワイドスタンスのスクワット

①足の幅を肩幅よりも広めにして立ち、両腕を胸の前でクロスする。
②つま先はやや外側に向ける。
③太ももが床と並行になるまでゆっくり体を沈め、再びゆっくりともとの位置に戻る。
これを10〜15回繰り返す。

このスクワットは、臀筋や内転筋に効果があります。臀筋は走ったりジャンプをしたりするときに働く重要な筋肉で、内転筋は広い範囲で脚をサポートする役割を持っています。これらの筋肉を鍛えることは、膝痛の予防につながります。

3.下半身に高い負荷を与える「ブルガリアンスクワット」

[図表4]ブルガリアンスクワット

①イスの前に立ち、片足のつま先か甲をイスに乗せる。
②前に出ている足をゆっくりと折り曲げ、膝が90度程度のところでキープする。
③曲げた膝をゆっくり伸ばしてもとの状態に戻る。
これを10〜15回繰り返し、反対の脚も同様に行う。

ブルガリアンスクワットのいいところは、足幅を変えることで効かせる部位を調整できるということです。足幅を広くすればハムストリングスや臀筋に、狭くすれば大腿四頭筋に効かせることができます。いろいろな足幅で試してみて、苦手な足幅で重点的に行ってみてください。

「ランナー膝」かもと思ったら…すぐにできる「対処法」

走っているときや走ったあとなどに膝の痛みが生じたら、まず安静を保つことです。それからアイシングをして、患部の炎症を抑えましょう。さらに、膝に負担をかける下り坂は避ける、芝生や土などの柔らかい地面を走る、走行距離を短くする、などランニング自体を見直す対策を取ることも大切です。

なにより大事なのは、早めに整形外科を受診すること。「ランナー膝は珍しい症状ではないから」といって放置すると痛みが慢性化し、その他の部位に痛みが生じたり、歩行が困難になったりすることもあります。

いったん痛みが治まっても、根本の原因がなくならなければ症状は繰り返されます。医師の指示をあおぎながらストレッチや筋力訓練を行い、筋力アップや柔軟性の向上をめざすことも大切です。


※筋力訓練を行う際の注意点
無理な運動はケガの原因になります。痛みや違和感がある場合はすぐに中止しましょう。


 

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こちらの記事の監修医師

世田谷人工関節・脊椎クリニック

塗山 正宏

世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会運動器リハビリテーション専門医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター

2005年北里大学医学部卒業。北里大学病院、北里大学東病院、同救急救命センターを経て、北里大学メディカルセンターにて人工関節置換術の研鑽を積む。
現在は世田谷人工関節・脊椎クリニックにて股関節、膝関節の人工関節手術を専門とする。

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