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最終更新日:2022年3月23日

まんせいぜんりつせんえん慢性前立腺炎

こちらの記事の監修医師
東京医科大学病院
平澤 陽介

概要

慢性前立腺炎は、男性のみが持つ器官である前立腺が慢性的に炎症を起こしている状態です。この慢性前立腺炎を患っている患者さんの数は想像以上に多く、特に社会的に生産性が高い、比較的若い男性に多く見られる疾患です。そもそも前立腺とは、膀胱の下あたりに存在する男性特有の臓器であり、生殖器のひとつでもあります。前立腺液(精液の一部)とよばれる体液を作ることで、精子に栄養を与えたり、精子を保護する役割をしています。射精や尿失禁の予防にも関与していることが知られています。前立腺炎は、細菌感染などが発症の原因となります。感染症の他にも、前立腺周囲の血流障害や、排尿障害に伴う尿の前立腺内への逆流、骨盤部や下半身の神経異常、副腎ホルモンや性ホルモンの異常などが慢性前立腺炎の原因となることが知られています。しかし、臨床的には明らかな原因が見つからないという場合の方が多く、慢性的なストレスや体力の低下などが発症に関与しているとも言われ、現代のストレス社会で患者数は増加傾向にあります。症状は様々で、なんとなく下腹部が重苦しい感じ、鼠径部や会陰に違和感や痛み(肛門と陰嚢の間の痛み)がある、恥骨上部の痛み、頻尿、切迫尿意、排尿困難などの症状が出現します。

原因

原因 前立腺炎には急性前立腺炎と慢性前立腺炎が存在します。さらに、それぞれの前立腺炎を、炎症性のものと非炎症性のもの、細菌性のものと非細菌性のものに分類することが可能であり、「疾患の原因が細菌感染かそれ以外か」というのは非常に重要なポイントです。しかしながら、慢性前立腺炎の病因・病態自体が現代においてもよく分かっていないのが現状です。慢性前立腺炎の場合、前立腺周囲の血流障害、排尿障害による尿の前立腺内への逆流、骨盤部や下半身の神経異常、副腎ホルモンや性ホルモンの異常、ストレスなどが発症の原因となりますが、明確な原因を特定できないことも少なくありません。長時間のデスクワークや長距離運転手、自転車競技の選手やバイクのドライバーなど、前立腺のある会陰部が長時間圧迫される職業の人にも起こりやすい疾患です。また、仕事や家庭の悩み、対人関係などのストレスが原因で、うつ状態とともに会陰部や鼠径部の違和感や痛み、不快感が現れることがあります。逆に、慢性前立腺炎による慢性的な下腹部や会陰部の痛みが、うつ状態を引き起こすこともあります。若いサラリーマンの方が、仕事や家庭など様々なストレスによって罹患しているケースが臨床現場においても、多く散見されます。

症状

慢性前立腺炎の症状は、前立腺や尿道付近のみならず、骨盤から腰周辺、太ももから足など、下腹部から下半身の広い範囲に出現することがあります。会陰部の鈍痛、睾丸の鈍痛や違和感、足の付け根付近の痛み、ふとももの痛みなどの他、頻尿、排尿困難、残尿感など、排尿障害の症状が出現する場合もあります。射精時に痛みや違和感を感じる、射精不全、勃起不全などの症状が生じることもあります。

検査・診断

前立腺に直接触れて確認する直腸診と呼ばれる検査が行われます。肛門から指を挿入して前立腺を触診することで、前立腺の腫れや圧痛などを確認することが可能です。一般的な尿検査や血液検査、超音波検査の他、必要に応じてレントゲン検査やCT・MRIなどの画像検査を併用します。血液検査によってPSAと呼ばれる値を測定することが可能であり、前立腺がん、前立腺腺肥大症、そして慢性・急性前立腺炎などではPSAが上昇する傾向にあります。また、NIH慢性前立腺炎問診表を使用することもありますが、この問診票は治療効果の評価は可能ですが、診断にはあまり有用ではありません。症状が重いかどうか、治療によって改善したかどうかの大まかな目安にはなっています。 *NIH慢性前立腺炎問診表:米国国立衛生研究所が提唱した分類で、多くの国で使用されている。

治療

薬物療法を行うことが多く、セルニルトンという植物製剤がよく使われます。セルニルトンは前立腺の炎症を抑える効果が認められ、日本でも保険適応になっています。また同様の植物製剤であるエビプロスタットも使用されることがあります。また排尿困難感がある方には前立腺肥大症でも使用されるα1ブロッカーを併用することもあります。また、前立腺における末梢循環不全が原因と考え、ED(勃起障害)の治療にも用いられる血管拡張薬であるPDE5阻害剤を用いることもあります。また、竜胆瀉肝湯 、八味地黄丸などの漢方薬を用いることもあります。感染症が原因となる前立腺炎の場合、抗菌薬に薬物療法が必要になります。検査によって細菌感染が確認されないことも多いですが、この場合でも抗菌薬治療を開始するのが一般的です。抗菌薬治療は非常に長期間におよび、海外では6週間以上の投与が推奨されています。痛みなどの症状が出現している場合には、各症状に対する対症療法を行います。また、薬物療法だけではなく、食生活や生活習慣の改善は必須です。禁煙や減酒、食事の見直しなどの他、十分な休養をとって安静にすることが重要です。特にデスクワークや長距離運転手などの場合、仕事を休む(座り続ける姿勢をやめる)だけでも症状の回復が期待できます。毎日の生活の質を低下させる病気なので、一人で抱え込まずに、早めに泌尿器科医に相談することをお勧めします。

予防/治療後の注意

慢性前立腺炎を予防するためには、生活習慣と生活環境の改善が重要です。前立腺や骨盤底への物理的刺激は大きなリスク因子となるため、デスクワークや長距離の運転、長時間の自転車(トレーニングを含めて)、バイクなどは、前立腺に過度な刺激を与える可能性があります。これらの仕事を行っている人は、適度に休憩をとる、ストレッチをする、体を動かすなどが予防に効果的です。また、飲酒や喫煙なども前立腺炎発症の原因となります。健康的な生活習慣を心がけることが大切です。

こちらの記事の監修医師

東京医科大学病院

平澤 陽介

〇診療科:泌尿器科

【学歴・職歴】
2008年3月 北海道大学医学部医学科卒業
2010年3月 横浜労災病院 初期研修修了
2011年4月 慶應大学病院 泌尿器科 助教
2014年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教
2018年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教・医長 医学博士取得
2019年5月 Cedars Sinai (アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス)にResearch fellowとして留学
2021年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 講師

【資格】
日本泌尿器科学会 専門医・指導医
日本内分泌学会 専門医
日本ロボット外科学会 専門医 国内B級ライセンス
日本ロボット外科学会 (ダビンチ)認定医 certificate取得
泌尿器ロボット手術 プロクター認定医 手術指導医

【受賞歴・獲得助成金】
①アメリカ泌尿器科学会ベストポスター賞(2012年, アメリカ, アトランタ)
「Transurethral enucleation with bipolar versus open prostatectomy for patients with large prostate > 70cc」
②ヨーロッパ泌尿器科学会ベストポスター賞(2016年, ドイツ, ミュンヘン) 
「Impairment in Activities of Daily Living after radical cystectomy among elderly aged over 80. Assessment based on 6778 cases」
③埼玉地方会 ベストプレゼンテーション賞 (2011年)
後腹膜繊維症に対する腹腔鏡下尿管剥離術の検討
④科学研究費 2017-2018年 難治性前立腺癌に対するタキサン系抗癌剤とNFκB阻害剤を用いた新規治療戦略開発
⑤上原記念生命科学財団 海外リサーチフェローシップ 2020年 膀胱癌に対する新規免疫治療の効果予測バイオマーカーの開発
⑥佐々記念賞 「Sarcopenia as a Novel Preoperative Prognostic Predictor for Survival in Patients with Bladder Cancer Undergoing Radical Cystectomy Yosuke Hirasawa, Jun Nakashima, Daisuke Yunaiyama et al.」
⑦東京医科大学科研費フォローアップ助成金 去勢抵抗性前立腺癌に対する新規治療戦略の確立

他、著作論文多数

治療に適した診療科目

泌尿器科

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