アセトン血性嘔吐症【イシャチョク】

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最終更新日:2022年2月22日

あせとんけっせいおうとしょうアセトン血性嘔吐症

こちらの記事の監修医師
ファミリークリニックひきふね
梅舟仰胤

概要

アセトン血性嘔吐症は8歳くらいまでの比較的やせ型の子供に多く見られる症状で、別名、周期性嘔吐症や自家中毒とも言われています。主な症状として、嘔吐や倦怠感(だるさ)、頭痛、注意力の欠如などが挙げられる。運動会など体を動かした日に夕食を食べずに寝てしまった時や精神的なストレス(親から叱られたなど)を受けた時などに症状が発現することが多いです。一過性症状で収まる場合もあるが、多くは8歳程度まで周期的に症状を繰り返します。

原因

我々は活動するために常に糖質をエネルギーとして利用しており、不足した場合は体内の脂肪やたんぱく質(筋肉)などを分解し糖質に変換します。子供の場合、脂肪や筋肉などのエネルギー源が大人と比べ少ない為すぐにエネルギー切れを起こしてしまいます。運動や一時的な精神負荷は体にとって多くのエネルギーを必要とし、その際体内のエネルギー源をエネルギーとして糖質に変換しようとするが、その過程でアセトンという成分が作られます。このアセトンが血中で増えてしまうと、嘔吐や頭痛などの症状を引き起こします。 アセトンは血液を酸性に傾ける性質を持ちます。本来血液は中性だが、血液が酸性に傾くと体が異常を察知し、血液を中性に戻そうとするスイッチが入る。具体的には体内に存在する非常に強い酸である胃液を体外に排出し、これが嘔吐であり、嘔吐を引き起こされる原因です。また、エネルギー(糖質)不足を解消するため体内でエネルギー源からの変換を試みるも前述したとおり子供はそもそもエネルギー源が少ないため十分量供給できません。そのため低エネルギー症状、要は低血糖症状である頭痛や倦怠感といった症状が発現します。

症状

アセトン血性嘔吐症の症状は、原因から大きく2種類に分けることができます。血液が酸性に傾くことによる症状(主に嘔吐)と低血糖症状です。嘔吐は1日数回発現し、数日程度続くことが多く、嘔吐直後も吐き気は続き、何か口に入れるとまたすぐ嘔吐してしまうということが多いです。また嘔吐が続くため脱水症を併発しているケースもあります。 そして低血糖症状として、倦怠感や頭痛、注意力の欠如などが発現し、その他の特徴的な症状として口臭があります。血中で増えたアセトンは呼気からも排出されるため口臭がアセトン臭となり、一般的に甘酸っぱい、アルコールっぽい、リンゴが熟れたニオイと言われています。

検査・診断

問診と臨床検査により診断し、臨床検査では尿検査にて尿中のアセトン量(尿中ケトン体検査)の測定、血液検査にて血糖値や甲状腺機能などを測定します。問診では発症直前に運動をしたか、ストレスを受けたか、また遺伝要因も考えられるため両親の既往歴などといった点を主に親に対して確認をします。なお、嘔吐症状は一般的な細菌性胃腸炎などでも見られ、また低血糖症状は糖尿病などでもみられる症状であるため、問診、検査結果を総合的に診て判断する必要があります。

治療

直接的な原因はエネルギー(糖質)不足が大元である為この部分を改善することで症状は治まるが、脱水症を併発している場合や頭痛がひどい場合などは当該症状に対しても対症療法を行う。軽症であれば、吐き気止めの服用、そして糖質を含んだ飲み物を多めに摂取(少量を頻回摂取する)することで徐々に回復に向かいます。 それでも回復が見られない場合や、そもそも症状が重い場合は数日間入院した上で点滴を行い、激しい嘔吐発作が周期的に発現するような患者の場合は、抗不安薬などを使用することで発作回数は軽減されることがあります。

予防/治療後の注意

予防的観点として必要なエネルギーを不足させない事、つまり食事を抜かないことが重要です。前述したとおり、アセトン血性嘔吐症は、体内で不足した糖質を補うため脂肪やたんぱく質(筋肉)から糖質を作り出そうとします。その過程で生成されるアセトンが主な症状の原因であるため、摂取する食事も脂質やたんぱく質よりもむしろ糖質が多めの食事にすることが好ましいとされています。子供の場合、夕食をとらずに疲れて眠りにつく事も多いが、その前に両親が飴玉など何かしらの糖質を摂取させることが必要です。 アセトン血性嘔吐症は嘔吐などの発作が周期的に発現することが多い疾患であるので、日ごろから両親が子供の様子を気に掛ける必要がある。子供に吐き気や倦怠感といった初期症状が見られた場合、軽度なうちから糖質を含んだ飲料やお菓子を摂取させた方がよいといわれています。 一般的には8歳を超えてくると筋肉量も増えてくるためアセトン血性嘔吐症は自然に治りますが、稀にそれを過ぎても同様の症状が周期的に発現し長期的な治療が必要となるケースもあります。いずれにせよ日頃から十分な栄養摂取、そしてストレス負荷軽減のため十分な睡眠など規則正しい生活を送ることが重要です。

こちらの記事の監修医師

ファミリークリニックひきふね

梅舟仰胤

〇経歴:
東京大学大学院医学博士課程修了。2017年ファミリークリニックひきふね開院。「苦痛のない内視鏡により、胃がん大腸がんで亡くなるをゼロに!」をミッションとし、年間4,000件以上の内視鏡検査を行うお腹のスペシャリスト。東京大学医学部消化器内科非常勤医師、消化器病専門医、内視鏡専門医、総合内科専門医。テレビなどメディア出演多数。

治療に適した診療科目

内科 内分泌内科 小児科

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