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最終更新日:2022年3月23日

ふくあつせいにょうしっきん腹圧性尿失禁

こちらの記事の監修医師
東京医科大学病院
平澤 陽介

概要

腹圧性尿失禁は、腹部に力が加わることで、自分の意志とは無関係に尿が漏れ出してしまう疾患です。咳やくしゃみ、重い荷物を持った時、運動時など、腹部に一定以上の圧力がかかることによって尿漏れが生じてしまいます。尿道周囲に存在する尿道括約筋や骨盤底筋などの機能低下が原因となる疾患で、特に出産経験のある高齢女性に多く、女性ではもっともポピュラーなタイプの尿失禁であることが知られています。尿の頻度が異常に増加する過活動膀胱などの切迫性尿失禁を合併する場合もあります。腹圧性尿失禁は生命の危険がある疾患ではありませんが、日常生活の質を著しく低下させてしまう疾患です。週1回以上症状を経験している女性は約500万人以上ともいわれていますが、羞恥心もあり、病院を受診できていないことが多い疾患です

原因

腹圧性尿失禁はおなかに力が入ったときに尿漏れをしてしまう病気で、特に出産経験のある高齢女性に多く見られる疾患であり、出産、加齢、閉経後の女性ホルモンの低下、肥満や便秘、骨盤内の手術などが主な発症原因とされています。重い荷物を持ち上げた時、走る・ジャンプをした時・テニスやゴルフなどのスポーツをした時・咳やくしゃみをした時など、腹部に強い力が入った時に尿が漏れてしまうのが特徴であり、重症な場合は、階段や車の乗り降りなど、日常的な動作でも失禁してしまうこともあります。骨盤底筋群とよばれる、尿道括約筋や骨盤底筋を含む骨盤底の筋肉が、加齢や出産などによってダメージを受けることで筋肉が緩み、尿道を上手く締められなくなるというのが病態のメカニズムです。特に、出産が骨盤底筋に与える影響は大きく、その他尿道の構造(尿道が短い)や女性ホルモンなどの影響もあり、女性に発症しやすい疾患として知られています。

症状

腹部に力が加わった時に、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまいます。尿意切迫感(急にトイレに行きたくなる)、頻尿(尿の頻度が異常に増える)、切迫性尿失禁(トイレに間に合わずに漏らしてしまう)など、過活動膀胱や切迫性尿失禁の症状を合併する場合もあります。主な症状は尿失禁であり、腹圧性尿失禁そのものが生命に影響を及ぼすことはありません。しかし、いつトイレに行きたくなるかわからない、失禁してしまうかもしれない、恥ずかしくて相談できない、など、慢性的な不安やストレスから精神的な疾患を合併し、外出などの日常的な活動ができなくなる場合もあります。生活の質を大きく低下させる疾患であるため、早めに専門医の泌尿器科を受診して、適切な治療を行う必要があります。

検査・診断

症状の問診と病歴、出産歴などによって腹圧性尿失禁を疑うことが可能です。尿検査が行われる他、パッドテストやストレステストとよばれる検査を行うこともあります。また、必要に応じて、超音波検査やCT・MRIなどの画像検査が実施されることもあります。羞恥心から病院受診をためらってしまうケースも多く、発見や治療介入が遅れて重症度が進行してしまうこともあり、早めに専門である泌尿器科を受診されることをお勧めします。

治療

腹圧性尿失禁に対する治療薬として保険適応があるのはスピロペントという薬のみになります。軽症~中等症の方にこのスピロペント内服と骨盤底筋運動、「尿意があっても少しがまんする」などの膀胱訓練、水分量(飲水量)のコントロールを含めた生活指導で改善を認めることがありますが、中等症~重症の方には、TOT手術・TVT手術(図1)という、会陰部から行うプロリン製テープを用いて尿道中部を吊り上げて支える手術を行います。頻尿や尿意を我慢できないなど、切迫性尿失禁症状を緩和するための治療として、抗コリン薬やβ3受容体作動薬などの薬物療法が行われることがあります。これらの薬は尿道をひき締める作用を有しているため、尿失禁症状を緩和する効果が期待できます。

予防/治療後の注意

腹圧性尿失禁を治療(予防)するためには、骨盤底筋訓練や骨盤底筋体操とよばれる運動療法がとても重要です。緩んだ骨盤底筋を鍛える体操を3ヵ月以上毎日継続することで、60%以上の人に症状改善効果が期待できるといわれています。また、肥満傾向がある人の場合、減量やダイエットが症状改善に有効であることもあります。腹圧性尿失禁は生活の質を著しく低下させる疾患ですが、適切な治療やトレーニング(リハビリテーション)によって症状改善が期待できます。恥ずかしくてなかなか病院に行けないという人も多いですが、早めに治療を開始して、より良い生活を手に入れましょう。

こちらの記事の監修医師

東京医科大学病院

平澤 陽介

〇診療科:泌尿器科

【学歴・職歴】
2008年3月 北海道大学医学部医学科卒業
2010年3月 横浜労災病院 初期研修修了
2011年4月 慶應大学病院 泌尿器科 助教
2014年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教
2018年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教・医長 医学博士取得
2019年5月 Cedars Sinai (アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス)にResearch fellowとして留学
2021年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 講師

【資格】
日本泌尿器科学会 専門医・指導医
日本内分泌学会 専門医
日本ロボット外科学会 専門医 国内B級ライセンス
日本ロボット外科学会 (ダビンチ)認定医 certificate取得
泌尿器ロボット手術 プロクター認定医 手術指導医

【受賞歴・獲得助成金】
①アメリカ泌尿器科学会ベストポスター賞(2012年, アメリカ, アトランタ)
「Transurethral enucleation with bipolar versus open prostatectomy for patients with large prostate > 70cc」
②ヨーロッパ泌尿器科学会ベストポスター賞(2016年, ドイツ, ミュンヘン) 
「Impairment in Activities of Daily Living after radical cystectomy among elderly aged over 80. Assessment based on 6778 cases」
③埼玉地方会 ベストプレゼンテーション賞 (2011年)
後腹膜繊維症に対する腹腔鏡下尿管剥離術の検討
④科学研究費 2017-2018年 難治性前立腺癌に対するタキサン系抗癌剤とNFκB阻害剤を用いた新規治療戦略開発
⑤上原記念生命科学財団 海外リサーチフェローシップ 2020年 膀胱癌に対する新規免疫治療の効果予測バイオマーカーの開発
⑥佐々記念賞 「Sarcopenia as a Novel Preoperative Prognostic Predictor for Survival in Patients with Bladder Cancer Undergoing Radical Cystectomy Yosuke Hirasawa, Jun Nakashima, Daisuke Yunaiyama et al.」
⑦東京医科大学科研費フォローアップ助成金 去勢抵抗性前立腺癌に対する新規治療戦略の確立

他、著作論文多数

治療に適した診療科目

内科 外科 泌尿器科

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