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最終更新日:2023年2月18日

げんあつしょう減圧症

こちらの記事の監修医師
グローバルヘルスケアクリニック
水野 泰孝

概要

減圧症は、スキューバダイビングなどの高気圧な環境で体内に取り込まれていた窒素などが、急速な減圧によって気泡をつくって発症する病気です。スキューバダイビング後に発生した場合は潜水病とも呼ばれることもあります。重症度でⅠ型、Ⅱ型に分類され、Ⅰ型減圧症は軽症で、関節・皮膚・リンパ管が傷つき、Ⅱ型減圧症は重症で、脳・脊髄・肺・心臓などの臓器が傷つく病気です。減圧症はダイビング後の特徴的な症状から診断します。そして再圧治療(高気圧酸素療法)が主な治療法です。ダイビングの深さ・時間・浮きあがる速度を制限することで予防できます。

原因

ダイビング中にボンベから吸う空気には酸素と窒素が含まれているのですが、水中では空気が圧縮されているため、吸い込む酸素や窒素が高濃度なのが特徴です。ダイビング中は運動量も増え、高濃度の酸素を吸っても、すぐに消費してしまいますが、窒素は体内にたまってきます。その状態から水中で急速に浮上すると、窒素を十分に体外へ排出できず、体内に窒素の気泡が発生。そして、この気泡が血管をふさいだり、組織を傷つけたりするのです。しかも窒素は脂肪に溶けやすいため、脳や脊髄など脂肪の多い臓器がダメージをうけやすくなります。また、減圧症が起こりやすくなる増悪因子は以下のとおりです。深い長時間の潜水、急な浮上、一日で頻回に潜水、寝不足、疲労、飲酒、脱水、潜水後に飛行機に乗る、高齢、肥満、心臓の病気(心房中隔欠損症など)。減圧症の発生頻度は、レジャーダイバーで0.01~0.019%、職病ダイバーで0.095%くらいです。

症状

減圧症は重症度でⅠ型、Ⅱ型に分類されます。Ⅰ型減圧症は軽症で、関節・皮膚・リンパ管が傷つき、Ⅱ型減圧症は重症で、脳・脊髄・肺・心臓などの臓器が傷つく病気です。減圧症は比較的ゆっくりと発症するのが特徴ですが、半数は浮上して1時間以内、90%は浮上して6時間以内に発症します。発症してからも症状は徐々に現れ、最初の症状は疲労感・食欲不振・頭痛・けん怠感などです。その後、Ⅰ型減圧症では筋肉・関節の痛みが現れ、徐々に痛みが強くなります。さらに筋肉・関節・腱の腫れが出現。まれに皮膚のかゆみ、紅斑、リンパ節の腫れが見られることもあります。Ⅱ型減圧症は脳卒中に似ているのが特徴です。脊髄が傷つくと、四肢のしびれ、痛み、筋力低下、まれに排尿障害を起こし、脳が傷つくと、頭痛、錯乱、会話困難、けいれんを来し、内耳が傷つくと、ふらつき、めまい、吐き気、難聴を認め、肺が傷つくと、胸痛、呼吸困難、重症化するとショックから死にいたることもあります。

検査・診断

減圧症はダイビング後の特徴的な症状から診断します。血液検査でヘモグロビン、ヘマトクリット、凝固能などを調べることもあります。またCT検査やMRI検査で脳・脊髄に異常が見つかることもありますが、これはまれな所見です。

治療

減圧症は100%の酸素吸入で軽快します。そして、症状が強い場合は再圧治療(高気圧酸素療法)が主な治療法です。1気圧以上に保たれ密閉された空間内で100%の酸素を数時間吸入することで、酸素濃度を増やし、窒素濃度を減らし、気泡の大きさを小さくする治療法です。治療後は段階的に気圧を下げて、体内にたまった窒素をぬいていきます。再圧治療はダイビング後48時間であれば効果が期待できるため、発症から時間がたった場合でも専門治療のできる病院を受診してください。病院へ搬送までの間はフェイスマスクを顔に密着させて酸素吸入し、口や静脈から水分補給すると効果的です。

予防/治療後の注意

減圧症はダイビングの深度・時間・浮上速度を制限することで予防できます。ダイビング中、安全に浮上するためのガイドラインがあるので参考にしてください。まず息切れを感じた段階で潜水を中断するのが大切です。多くのダイバーは水中から浮上する際、水面下4.5mで数分間停止してから再浮上し、減圧症を予防しています。携帯型のダイブコンピューターで安全に水面に戻るための減圧スケジュールを計算することもあります。数日間ダイビングした場合は、すぐに飛行機に乗ったり、高地へ移動したりしないでください。12~24時間海抜ゼロの場所で体を慣らして移動するとよいでしょう。また、Ⅰ型減圧症後は、2週間はダイビングしないこと。Ⅱ型減圧症後は、最低でも1カ月はダイビングしないことが需要です。さらに近年では窒素の割合を少なくしたナイトロックスボンベも普及してきました。ただし、予防しても減圧症のリスクはゼロにはなりません。増悪因子を持つ人は特に要注意でしょう。減圧症の後遺症として、減圧性骨壊死、永続的神経障害が見られることがあります。脊髄が傷つくと後遺症を残しやすいのが特徴です。

こちらの記事の監修医師

グローバルヘルスケアクリニック

水野 泰孝

〇診療科:内科・感染症内科・小児科・アレルギー科・トラベルクリニック

【学歴 】
私立駒場東邦中・高等学校(1982-1988)
昭和大学医学部医学科(1988-1994)
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科(熱帯医学専攻)(1998-2003)
長崎大学熱帯医学研究所(1999)
(Diploma in Tropical Medicine)
タイ王国マヒドン大学熱帯医学部(2001)
(Diploma in Tropical Medicine & Hygiene; DTM&H)
バングラデシュ国下痢症疾患研究所(2002)
(Workshop on Emerging and Re-emerging pathogens)
連合王国ロンドン大学公衆衛生・熱帯医学部(2005)
(Travel Medicine Short Course)

【職歴】
東京慈恵会医科大学付属病院 臨床研修医(1994-1996)
東京慈恵会医科大学付属柏病院・第三病院 小児科助教(1996-1998)
東京慈恵会医科大学付属病院 感染制御部 診療医員(2003-2004)
国立国際医療センター(現:国際医療研究センター)国際医療協力局 厚生労働技官(2004-2005)
国立国際医療センター病院 国際疾病センター(現:国際感染症センター)厚生労働技官(2005-2010)
外務省 在ベトナム日本国大使館 一等書記官兼医務官(厚生労働省より出向)(2007-2009)
国際協力機構(JICA)感染症顧問医(2009-2017)
厚生労働省羽田空港検疫所 非常勤医師(2011-2019)
東京医科大学病院 感染制御部・渡航者医療センター 准教授(2010-2018)
東京医科大学病院 感染制御部 部長(2013-2015)
東京医科大学病院 感染症科 診療科長(2013-2015)
東京医科大学病院 国際診療部 部長(2016-2018)
一般病院・診療所 非常勤医師(2017-2019) 東京都(杉並区、新宿区、葛飾区、世田谷区、千代田区、調布市)、神奈川県(横浜市、川崎市)、千葉県(松戸市、流山市)、埼玉県(所沢市、三郷市、蕨市、羽生市、吉川市、上尾市)、栃木県(真岡市)、群馬県(渋川市)、茨城県(古河市)、山形県(庄内町)、岩手県(奥州市)、北海道(旭川市、釧路市、月形町、江差町)、熊本県(天草市)

【役職】
日本感染症学会評議員
日本熱帯医学会評議員
日本化学療法学会評議員
日本渡航医学会評議員
日本臨床寄生虫学会評議員
日本小児科医会国際委員長
国際協力機構海外協力隊派遣前訓練 感染症講師
株式会社 わらべや日洋ホールディングス釧路工場 嘱託産業医
株式会社JM 嘱託産業医
社会福祉法人ちとせ交友会 嘱託医
株式会社 電通 感染症対策アドバイザー
東京都三鷹市 感染症対策アドバイザー
認定資格
日本感染症学会認定感染症専門医・指導医
日本小児科学会認定小児科専門医・指導医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
日本医師会認定産業医
日本感染症学会推薦インフェクションコントロールドクター(ICD)
身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
国際渡航医学会認定医(CTH® )
米国熱帯医学会認定医(CTropMed® )
一般旅行業務取扱管理者
PADIスクーバダイビングインストラクター(OWSI)
日本臨床内科医会認定医(~2013)日本人間ドック学会認定医(~2014)日本温泉気候物理医学会温泉療法医(~2015)日本化学療法学会抗菌化学療法指導医(~2017)

治療に適した診療科目

内科 耳鼻科

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