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最終更新日:2022年3月31日

こうおんしょうがい構音障害

こちらの記事の監修医師
横浜栄共済病院
森下 大樹

概要

構音障害とは、ことばを正しく発音できない状態のことです。構音障害は、器質性構音障害、運動性構音障害、機能性構音障害、聴覚性構音障害の4つに分類されます。構音障害はあくまで発音の問題であり、ことばを意味のある記号として正しく使うこと、あるいは理解することができない状態を失語症と呼び、構音障害と区別されます。

原因

器質性構音障害は、発音器官の形態の異常によるものです。具体的には、口唇口蓋裂、粘膜下口蓋裂、舌小帯短縮症、先天性鼻咽腔閉鎖機能不全症、巨舌症、歯列不正、咬合異常、顎変形症、舌口腔癌などがあります。運動性構音障害は、発音運動に関与する神経・筋の異常によるものです。具体的には、脳梗塞、脳出血、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、脳腫瘍などがあります。機能性構音障害は、発音器官の形態や機能、知的な遅れや聴力の問題はないが、発音器官の使い方に誤った癖があるものです。ほとんどが言語獲得期に生じる発達性の障害です。聴覚性構音障害は、言語獲得期に難聴によって、正しい発音や自分の発音が聞き取れないために生じます。両側中等度以上の難聴の場合に起こります。

症状

症状は原因となる疾患によっても異なりますが、一般的には以下の通りです。
●開鼻声(鼻に抜けるような声)
●声門破裂音(のどをつめて出した母音のように聞こえる)
●側音化構音(イ段の音がうまく発音できない。例:「シ」が「ヒ」、「チ」が「キ」、「ジ」が「ギ」に聞こえる)
●口蓋化構音(タ行がカ行、ダ行がガ行に聞こえる)
●歯茎音の歪み(サ行音、タ行音などがうまく言えない)
●ラ行音の歪み(ラ行音がうまく言えない)
運動性構音障害では、以下の症状が出る場合もあります。
●話す速度が遅くなる
●力のない弱々しい発音になる
●流暢に話せない(音節がバラバラに聞こえる、ぶつ切りされたように聞こえる)
●音が引き延ばされたような発音になる(例:「たたみ」が「たあーみ」になる)

検査・診断

●小児の場合
小児の場合は、言語獲得期に構音障害が出現することが多く、器質性・運動性構音障害なのか、あるいは機能性・聴覚性構音障害なのかの鑑別が重要です。まずは、口唇、舌、舌小帯、軟口蓋、扁桃、歯、咬合(歯の嚙み合わせ)などの発音器官に形態や機能の異常がないか診察します。また、聴力検査で難聴の有無を確認します。構音の評価には、構音検査を行います。この検査は、会話の観察、単語検査(50語)、音節検査、音検査、文章検査、構音類似運動検査から構成されており、3 歳くらいから実施可能です。検査結果を健常児と比較し、対象児の構音獲得状況を把握します。構音の誤りが、獲得の遅れによるものか、健常児の構音獲得過程ではみられない誤り(異常構音)なのかを判断します。初めて言葉をしゃべった時期や二語文の出現時期などの言語発達歴から、言語発達や知的発達の遅れが疑われるときには、言語発達検査、知能検査を実施します。発音器官の形態異常が疑われる場合は顔面・頸部CT検査、脳疾患が疑われる場合は頭部CT検査やMRI検査を行う場合があります。
●成人の場合
成人後に生じる構音障害は、一度正しい構音を獲得した後に構音障害をきたすケースが多く、ほとんどが器質性・運動性構音障害です。まず、小児と同様に発音器官に形態や機能の異常がないか診察します。また、脳神経症状や手足の麻痺の有無など全身の神経所見に異常がないかを確認します。発音器官の形態異常が疑われる場合は顔面・頸部CT検査、脳疾患が疑われる場合は、頭部CT検査やMRI検査を行う場合があります。

治療

器質性構音障害の場合は各疾患の治療を行った上で、構音訓練を行います。例えば、口蓋裂であれば口蓋形成術、舌小帯短縮症であれば舌小帯形成術です。しかし、各疾患の程度や構音障害の程度によって、手術は行わずに構音訓練だけの場合もあります。鼻咽腔閉鎖機能不全による開鼻声の場合は、スピーチエイドという発音補助器具を口腔内に装着して訓練する場合もあります。運動性構音障害では、各神経筋疾患に対する投薬を行いながら、構音障害に対するリハビリテーションを行います。機能性構音障害では、構音訓練を行います。一般的に、3、4歳時点では構音障害の評価を行いつつ経過観察し、5歳以降に構音障害が改善していない場合に構音訓練が行われます。聴覚性構音障害では、難聴の原因となる疾患に対する治療を行います。例えば、滲出性中耳炎であれば、投薬や鼓膜チューブ留置術があります。根本的に改善できない難聴に対しては補聴器を装用します。高度以上の先天性難聴で補聴器の効果が不十分な場合は、人工内耳埋込術が考慮されます。難聴に対する適切な対処後も構音障害が残存する場合には、構音訓練を行います。

予防/治療後の注意

小児期の構音障害では、言語獲得期である就学前の診断・訓練が重要です。また、難聴や発達障害を合併していることがあるため、それらを見極める必要があります。各自治体で行われる3歳児健診では、聴力や発達の状況を確認してくれるため、必ず受診しましょう。ことばの遅れや発音に関して気になることがあれば、ぜひ相談してください。

こちらの記事の監修医師

横浜栄共済病院

森下 大樹

〇診療科 :耳鼻咽頭科

【経歴】
2012年 横浜市立大学医学部卒業
2012年 横浜労災病院初期研修医
2014年 横浜栄共済病院 耳鼻咽喉科
2016年 横浜市立大学附属市民総合医療センター シニアレジデント
2017年 横浜市立大学附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 指導診療医
2019年 横浜市立大学附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教
2020年 横浜栄共済病院 耳鼻咽喉科

【資格】
・日本耳鼻咽喉科学会専門医
・補聴器相談医
・補聴器適合判定医師
・身体障害者15条指定医(言語・そしゃく機能障害、音声機能、聴覚・平衡機能障害)
・難病指定医

治療に適した診療科目

形成外科 小児科 耳鼻咽喉科 リハビリテーション科 歯科 歯科口腔外科

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